応挙寺の生きものたち
初めて「大乗寺」を訪れた時に感じたことがありました。
「大乗寺」は俗に「応挙寺」と呼ばれるように、何と言っても円山応挙が描いた障壁画で有名です。ところが「大乗寺」客殿十三室を巡って体感したのは、応挙とその一門の弟子十三人の共同制作で作られた空間だということでした。しかも、師匠と弟子の言葉から江戸時代職人の修行の厳しい上下関係を想像しがちだが、大乗寺客殿からは少し異なった雰囲気を感じ取りました。師匠と弟子でありながら、それぞれの作家としての個性を尊重する関係、すなわち理想的な西洋のサロンのような空気を感じたのです。客殿障壁画のどの部分を見ても、担当した絵師の生き生きした喜びを感じるのです。
客殿十三室に描かれているのは、人間よりも圧倒的に「生き物」の方が多い。応挙自らが描いた孔雀を初めとして、猿、鴛鴦、鴨、蝶、蛾、山雀、燕、牛、亀、犬、鯉、鮎、馬、鶴など、鳳凰まで数えると、18種類207個体描かれている。この生き生きと描かれた生き物をクローズアップすることで、今回の展示のテーマの一つである共同制作の喜びを伝えたいと思った。
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