2024/08/07

一瞬と空間

8/27日から始まる資生堂ギャラリーでの展覧会の準備に追われています。

その忙しい最中にたまたま手にした本『春はまた巡る 芸術と人生これからを語る』デイヴィッド・ホックニー&マーティン・ゲイフォード著を読んでいたら気になる箇所があった。
8章「空、空」夕暮れの美しさを述べてる文中のこんな記述です。

「夕暮れの写真はどれも似通っている.写真では一瞬しかとらえられないからだ。写真には動きがないから、空間もない。だが描かれた夕暮れにはそれがある」

が目に止まった。
ホックニーさんは写真を使った作品も多数あるので、写真に対する造詣も深いのでしょうが、上記の文章は少々ガッカリした。

写真は一瞬をとらえるからこそ動きもあるし、空間の広がりも感じる。風景の内にも見えない根源的な存在を感じ取ろうとした写真もあるのだ、と知って欲しい。


2024/07/26

十文字美信 ☓ 伊藤俊治 クロストーク 静寂を叩くー日本の美と場を巡って

8/27日~10/20日まで資生堂ギャラリーで開催される展覧会「空想の宙/静寂を叩く 大乗寺十三室 十文字美信」の準備に追われている毎日です。
 
楽しみな企画が決まりました。

9/7日(土)伊藤俊治さんとの対談です。

伊藤さん初期のご著書『ジオラマ論』『写真と絵画のアルケオロジー』から最近(2020年)に発行された『陶酔映像論』など、いつも興味深く拝読しています。
私は個人的には存知あげないので、どのような内容になるかわかりません。当日その時の流れで変わっていくと思いますが、なんにせよ当人である私が楽しみにしています。写真家になって53年間、今まで何を見ようとして来たのか、伊藤さんの力で浮かび上がってきたら最高です。
皆様ぜひご来場くださいませ。

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2024/07/16

「出現」と「時間」

応挙が描いた孔雀絵

今回開催する資生堂ギャラリーでの展覧会、メインテーマを「出現」に決めた。

(応挙が描いた孔雀絵は圧倒的です。凄い障壁画を前にして写真を撮る意味はあるのだろうか?圧倒的であるって、圧倒されたこの感覚を写真に定着出来ないだろうか?)

日本間における特徴の一つは、襖を開けると次の間に描かれている全く異なった世界が現れることだ。大乗寺の場合で言うと、源埼描くところの老梅の襖を引き開けた瞬間に芦雪が描いた猿が現れるのだ。当たり前と思うかもしれないが、今まで見えなかったものが眼前に出現するというのは、いつの場合も私にはショックだ。事前に何が現れるのか知っていればショックは小さいけど、知らなかったら尚更わくわくする。

一瞬で世界が変わるのも衝撃的だが、ゆっくりと少しずつ何かが変わっていくのも私にはたまらない快感だ。しかも、変わっていることに気づかなかったとしたら、まさに今生きているこの世の中的ではありませんか!そして、変化していることに偶然気がつき、気がついた自分を自覚した時は大袈裟でなく震えます。

いつの間にか心の中に浮かび上がってくる映像もこれと似ていて、これはこれで自分にとっての真実なのです。

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