2011/03/21

東北関東大震災

千年に一度といわれるくらいの、歴史上かつてないくらい凄い天災が起こってしまった。

3月11日午後、僕は鎌倉の自宅近くにある事務所内にいたのですが、突然、家がきしむ音とともに、ものすごい揺れがきました。今まで経験した揺れとはどこか違う感覚だったので、外へ出ると、近所の人たちも表に出ていて、空などを見上げていました。不気味な音が聞こえるのです。多分、建物や電柱、その他の建造物が唸りをあげているのではないか、と思いました。そこへ強烈な揺れが再びきました。歩くのもままならないほどで、女性が2人、地べたにしゃがみ込んで頭を抱え、「たすけてえ」とつぶやいていました。電線だけでなく、電柱も揺れているのが見えました。しかし、その時点で、この地震が、東北地方を中心とした、これほどの大地震だったとは想像できませんでした。

今は3月21日の早朝。震災からちょうど10日目ですが、時々、未だに余震と思われる揺れを感じます。連日、テレビやラジオで報道されるニュースを聞くばかりで、あまりの災害の大きさに言葉もありません。僕は直接の被害はなかったのですが、東北に居住する友人の中には未だにご家族の安否がわからない方がいます。被災者の方に対して少しでも励ましや慰めの言葉をかけたいのですが、実態を知るにしたがい、何を言っても嘘に感じてしまいます。この災害の現状を語るにふさわしい言葉は見つかりません。吐くべき言葉は、希望を意味しなければならないのでしょうが、自分の気持ちを正確に表現する言葉が出てきません。

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2011/03/10

照明名人佐野武治さん

3月4日の昼、サントリー「角」のスタッフより電話が入り、「十文字さん、その声ではまだ知らないでしょ?」と言われ、そこで佐野武治さんの訃報を知った。
スタッフの声は泣いていた。
午前中、京都の知人からしきりに電話が入っていたのだが、仕事をしていて電話に出ることができなかった。
午前中、入院先の病院で亡くなったと聞き、言葉を失った。
残念です。

2月15日、「キンチョール」のTVCFの撮影を一緒にしたばかりだったのですが、それが佐野さん最後の現場だったと聞きました。
とても残念です。
それ以外の言葉がみつかりません・・・。

佐野さんの照明技師としての評価は、国内だけでなく世界的にもトップクラスでした。
映画の世界に関係する人では知らない者はいないほど、名実共に頂点の人です。
特に、黒沢明監督の作品が有名です。「影武者」「乱」「夢」「八月のラプソディー」「まあだだよ」など、「影武者」以後、晩年の黒沢作品のすべてにわたって、照明を担当しました。

黒沢監督がサントリーウィスキーのCFに出演者として登場した折、カメラマンの宮川一夫さんから頼まれ照明を担当したのが縁で、それ以後黒沢作品に関わるようになったと話されていました。
佐野さんは、映画の照明技師として有名ですが、実はTVCFの仕事もたくさんこなしていました。
僕と佐野さんとの関係は、僕が撮影するTVCFの照明をお願いすることから始まりました。

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2011/02/23

「升たか」さんのコーヒーカップ(1)

昨年の秋頃から、ずっと考えていることがありました。
それは、コーヒーカップです。
自分のコーヒーの味がはっきりと決まったので、次はカップをどうするか、思案していました。
なんとなく決めていたことは、なんにでも合うような無難なものは止めようと思っていました。
言ってみれば、アースカラーのような、どの空間に置いても似合ってしまう器は、おもしろくありません。
ただの白いカップもつまらない。
コーヒーは嗜好品ですから無難なもので終わらせたくない。「好き嫌い」だけで決められるものは、思いきって行くところまで行ってみたい、というのが僕らしい、と思っています。
それで、「絵付け」のカップを探していたのですが、なかなか気に入ったものが見つかりませんでした。

「へたうま」は嫌いです。
しっかりした技術、センスに裏打ちされた本当の「絵付け」が出来る陶芸家を探していました。
もっとも、技術があるだけでも駄目です。
冒険してなければ、新しく作る甲斐がありません。
それに、何よりも僕が焙煎して抽出したコーヒーの味、香りにぴったりの世界をイメージできる作家でなければなりません。
いったい、そんな「絵」が描ける人は誰だろう、と日夜考えていたのです。

先日、突然、ある人の姿が浮かんできました。
「升たか」さんです。

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