2016/12/31

写真と珈琲のバラード(14)

私は20歳の時に偶然のきっかけから写真家になろうと決心して、横浜から東京に出て来ました。24歳で独立したのですが、それまでの4年間で、目にしたあらゆる種類のカメラ機材の使い方を覚えました。当時はフィルムでしたから、使用するフィルムのサイズ、種類によってカメラも違います。4×5インチ、8×10インチのフィルムサイズを使う、いわゆる大型カメラは、この世界に入るまでは触ったこともありませんでした。レンズによって味が違う、というのも驚きでした。レンズの切れ味やボケ味、全体のトーンのディテールが微妙に違うのは暗室作業を体験することでよりリアルに確認出来ました。

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2016/12/31

写真と珈琲のバラード(13)

連日、暗室に籠って次回刊行予定の写真集『常ならむ』に掲載する作品を焼いていますが、今朝は、ちょっと気分転換のために珈琲について書いてみます。

写真も面白いですが、珈琲の焙煎もなかなか面白い。何が面白いのかというと、不確定要素があまりに多く、毎回発見があり、小さな驚きの連続です。大きな驚きはたまに体験するので充分ですが、連日のように小さな興奮を味わうことが出来るのは幸せだと思います。何しろ手元に来た生豆がどのような環境を経験して来たのか、そのロットによって違うのですから、厳密に言うと基準がありません。条件の違う素材に立ち向かって、それぞれを一定のレベルに持って行くには、自分なりに工夫した約束事が必要です。

珈琲の焙煎は生豆を焼くことですが、この焼き方によって、香り、口当たり、味、喉越し、ヌケ、残り香などの要素は全く異なってきます。一つ一つの要素に自分の理想を決め、そのために何をどうすれば良いかを実践努力するわけです。写真もそうですが、何事も自分なりの発見が大事です。

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2016/12/20

写真と珈琲のバラード(12)

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連日、暗室に籠ってプリントをしています。
次回刊行予定の写真集『常ならむ』に掲載する作品に取り組み、先月、6章で構成する作品の内の1章「残闕」(ざんけつ)のカラープリントが終わりました。写真家といっても、デジタルしか経験ない人は、フィルムで撮影して紙焼きをする、なんて知識だけでそのうちに「やったことない」人も出てくるのだろうね。

以前は(私が写真をやり始めた4~50年前ですが)、温度管理など環境の整備や現像の手順が複雑だったので、自分でカラープリントをする、という発想は持てませんでしたが、今は混合された現像液も手に入るようになり、その気にさえなればカラープリントが自分の暗室で出来るのです。

暗室作業は撮影と等しいくらい、あるいは場合によっては暗室作業の方がさらに神経を使います。基本的には露光時間と焼き付ける光の強さの相関関係で画像を決定していきますが、モノクロプリントとカラープリントの大きな違いの一つは、カラーの場合は全暗で作業を行わなければならないことです。モノクロなら赤色のセーフティーランプを点けることが出来ますが、カラーの場合は真っ暗で全ての作業をしなければなりません。手探りで行うわけです。

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