写真と珈琲のバラード(16)
年が明けて、北陸を中心に大寒波襲来との予報を聞き、佐渡へ向かいました。次回刊行の写真集『常ならむ』に、スナップを入れたいのです。
昨年暮れは青森、秋田を主とした東北の地を歩きました。私の記憶の中の何か、がムズムズと動きます。記憶というのは厄介なもので、覚えているさまざまなことが、事実かどうか不確かになってきてる。心の中で何度も反復しているうちに、いつの間にか、こうありたいと願うような方向に傾いている。記憶の中に現れる世界が茫漠として、今にも消えてしまう気がします。かつて出会い目にした事柄を今のうちに記録しておきたいのです。記録したいのは、事実そのものではなく、記憶の中の事柄から、出会ったその時に生じた「心もよう」を写真にしておきたいのです。「心もよう」なんて写真に写るの?と思われるかもしれませんが、写真を撮り始めてから今までずっと試みてきました。決定的な凄い出来事ではなく、普段目にしてる日常的な何でもない風景や人、そこらへんに見える暮らしの断片を丹念に見ることで生じた想い、を写真に撮ってみたいのです。
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