2025/07/19

見えないものへの接近

距離が遠くなると見えない。
過ぎ去った過去は見えない。
当然ながらこれから訪れる未来は見えない。
物体が移動するにあたって一定の速度以上になると見えない。
遮蔽物の背後は見えない。
極小、極大なものは見えない。
音がするだけでは見えない。
闇は見えない。

これら見えないものへの接近が私の写真撮影の動機と言える。
 


2025/07/11

「偶然」の概念はない

上から順に。

新年に舞う儀礼。
病気治療のための儀礼。
婚姻の際に行う鶏の骨から吉凶を見る卜占。
病を得た人を渡らせる橋。
クワタン(通過儀礼)の前にシップミエントン(設鬼小、設鬼の助手)に力を注ぐ設鬼。
トウサイ(段階の高い通過儀礼)の際に設鬼が天神と交信する祭壇。
毎朝卜占する設鬼老六。

1980年代当時、ヤオ族の村で暮らす間に私が得た感想は、彼らには「偶然」の概念はないということだった。

写真家として、写真を考える上でとても力になった。
 


2025/07/10

走七星羅歩 (ヤンチェットフィンコントウ)

設鬼老六
走七星羅歩

ヤオ族の設鬼(シップミエン、呪術師)老六と知り合ったことは、30代の私には幸運だった。

彼の家で暮らす間に、私はさまざまな質問を執拗に繰り返した。
彼とは漢字を用いた筆談でコミュニケーションをとったのだが、そのことも私には幸運だったと言える。
拙い話し言葉よりも漢字でやりとりした方が正確かつ受け取るイメージが格段に広がるのだ。

ヤオ人の男は成人になるために「クワタン」(掛灯)儀礼を経験しなければならない。
通過儀礼である。
通過儀礼は四段階あり、クワタンは第一のステップである。
中でも「ヤンチェットフィンコントウ」(走七星羅歩)は、クワタン儀礼のクライマックスに訪れる。

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