2013/05/17

パン屋さん「ISHIKO」

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多摩美術大学で授業を持つようになって今年で9年目です。来年の3月で教授の定年が来ますので退職しなければなりません。自分の人生設計なんて、もともと何も持っていないのですから、何をやってもどうなろうと、別に驚くことは何もないのですが、大学教授の肩書きは自分にとって全くの予想外でした。若い人に対して丁寧に接することは、どちらかというと面倒なことだと思っていましたから、それほど長くはやらないだろうと思っていました。家人も僕を知る周囲の人も同じように想像していたでしょう。ところが実際に学生と接すると、情熱はあるし、学びたい、知りたいという欲望が強いので、授業初日からワクワクさせられたのを思い出します。
僕は3年程前からギャラリーとカフェをやりだしたので、その影響もあると思いますが、卒業しても教え子たちはしょっちゅう訪ねて来てくれます。

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2013/05/11

若杉聖子作陶展「朧朧」始まる。

A5/15日~5/27日まで。火曜日休み。

若杉聖子さんの作品を初めて直接拝見したのは、写真家の渞忠之さんが持参された花器でした。
昨年の10月でしたから最近のことです。
その後、若杉さんが目白のギャラリーで展示発表した時も、見に行きました。
小さな空間に、清楚な純白の花が開いたような静かな展示でした。
器を手にとってみると、白磁の表面に砂を使って擦ったような柔らかな手触りがしました。

釉薬の光沢は一切なく、素焼きの石膏像に近い優しい感触です。
見つめているうちに、清楚なだけでなく、どこからともなくざわざわした胸騒ぎのような感覚が湧き起ってきました。
その感触はむしろ、磁器や陶器よりも生温かい、女の人肌に近い感覚です。
そう感じると、それまで清楚に感じられた作品がむしろ生々しく、妖艶でセクシーにも見えてきました。

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2013/04/27

沖 潤子作品展「刺青」始まる。

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4/24(水)から5/6(月)まで/火曜日休み。

GALLERY Bが企画した展覧会については、僕がDM用の写真を撮らせていただくことにしています。今までには、升たかさんの陶器、瀧本さんの木彫を撮影してDMを作ってきました。今回の沖さんの刺繍作品も、撮影するのが楽しみでした。

僕は不覚にも、沖潤子さんの仕事、作品を、最近まで知りませんでした。
昨年のある時期に、ほとんど同時に(まったく同じ日に)写真家の渞忠之さんと陶芸家の升たかさんから、「凄い作品を作る人がいますよ」と教えられました。
それが聞いてみたら、鎌倉在住で、我が家からもそれほど離れていない距離にお住まいでした。
早速連絡をとって、作品を見せていただきました。

古い布地に、一針一針、丁寧に針を刺しているうちに自然にこれが現れました、というような作品です。
沖さんの作品を言葉で表現するのは難しい。
近寄って見つめると、とても繊細でありながら、全体は自由な精神で作られているようです。
針目を見つめていると、沖さんが辿った道程を僕も同じように歩いているような気持ちになってきます。かつて抱いていた想いの中にいつの間にか浸っているような、そして知らぬ間に、これから実行しようとしてる決心が胸の中に湧き起こってくるようです。

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