2013/11/28

多摩美術大学・十文字美信最終講義(1)

2014年3月末日をもって、多摩美術大学教授の職を定年退職します。
2004年に着任しましたから、来年でちょうど丸10年になります。
月並みな言い方ですが、本当に月日が過ぎ去るのは速いです。

大学の職に着くのは、この時がまったく初めてでしたから、多摩美のキャンパスに期待と不安が入り混じった気持ちで行ったのが懐かしい。
着任初年度から優秀で熱心で可愛い学生たちに恵まれて、戸惑うこともなくスンナリ授業に入れました。

私の前任が脇リギヲ先生でしたから、授業の中心は暗室作業だったようで、当初学生たちは撮影の楽しさ面白さに気付いていないようでした。

それに最も難しいのは、多くの学生たちは写真家志望ではない、ということです。
グラフィックデザイン学科ですから、将来はグラフィックデザイナー、イラストレーター、ウェブのゲームソフトを作る、あるいはアニメーター、中にはTVCMの企画演出、などを希望する者が多く、写真家志望は年に3人もいないでしょう。と学科長から伝えられていました。

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2013/11/10

十文字美信・瀧本光國 二人展

十文字美信・瀧本光國 二人展

11/13(水)-11/25(月)まで、GALLERY Bで彫刻家瀧本光國さんと二人展を開催します。

写真と彫刻を同時に展示するのは、昨年に引き続き、今年が二度目の試みです。

ギャラリースペースを二つに分けて、それぞれの作品を別々に展示するのでは、二人展をやる意味がありません。
せっかくの試みですから、三次元立体である彫刻と二次元平面の写真が、鑑賞者の心の中で融合し、それぞれの作品の特徴が響き合っ

て、新しい世界が生まれるといいなぁ、と思っています。

今回展示する僕の作品は、最新作の「残欠」です。
解体し或いは損壊した仏像の断片や部分を詳細に撮影した作品です。
今年の9月にウクライナのキエフで展示した作品も数点あります。

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2013/11/04

鎌倉時代の仁王像

腕

仁王像が僕のギャラリーに来た。

阿像、吽像の2体一対。
像高2m40cm、制作は推定1200年代、バリバリの鎌倉時代作です。
檜の一木割り剥ぎ造り(いちぼくわりはぎづくり)。
仏像を見るといつも思う。
「寄せ木」(よせぎ)と「一木」(いちぼく)では彫刻としての力が全然ちがう。
合板の箱物で作る家とムクの木で作る家との違いに似てる。

鎌倉時代は日本の歴史上、特別な時代と言ってもいい。
それ以前の文化を作ってきたのは、天皇、貴族を代表とする、いわゆる知識階級が担っていた。
関東地方に一所懸命の武家集団が台頭してきて、一気に一般の人たちが歴史の中心に躍り出た時代だ。
武士や農民、職人、商人が時代の表に登場して来る。
仏教の世界にも新しい思想が生まれた。
法然、親鸞、日蓮、一遍といった新仏教の僧が、名も残らない人たちと行動を共にする。
仏像の表現方法も、平安時代の理想的でどちらかといえば女性的な造形から、人体をモデルにしたリアリズムが勃興した。
鎌倉の頼朝が奈良の仏師集団慶派を重用したせいもあって、力強い造形が数多く遺された。

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