タヌキ

写真[1]

このところギャラリートークが続きました。
2/17は、デザイン界で最も有名な高校と言ってもいいと思う、神奈川工業高校図案科卒業生達が主催する「ZUAN図案」の会、そして2/23は、北鎌倉の東慶寺さんから頼まれて、愛好家の皆さんを前に少しだけ写真の話をしました。
僕の話がどれだけ役に立つかわかりませんが、今後の写真撮影に参考になればと思います。

今日は写真のことを思いつくままに書いてみようと思っていたら、思わぬことが起こりました。

鎌倉市観光協会主催の公募写真展に応募された写真をセレクトしている最中、カチャッとドアを開けて家内が近づいて来るなり僕の腕を引っ張ります。「なに?」と尋ねても答えません。家内がこんな雰囲気になる時はだいたい決まっています。動物に関することに違いありません。「はは~ん、さては家の猫であるネコジが何かしたのかな?」と思っていたら、庭の入り口横まで僕を連れて行きます。そして泣きべそ顔で地面を指差しています。
指されたところを見ると、動物が倒れています。
アライグマかハクビシンか、と思ってよく見たらタヌキの顔でした。

鎌倉は街といっても、自然が身近に存在しています。鳥や昆虫の珍しいやつはしょっちゅう目にしますし、アライグマやハクビシンは何度か見かけたことがありました。
しかし、野生のタヌキになると、そうはお目にかかれません。
死んでるのか、と目を凝らすと、まだ微かですが時々息をしています。
「どうしよう、医者に連れてって」と家内は僕に言います。
さて、どうしたもんか、と倒れたタヌキを見つめていました。
殆ど息をしていません。
抱いて箱に入れて、獣医まで運ぶか、と思いましたが、すぐには決心がつきません。
もし僕がこのタヌキだったらどうして欲しいだろうか、と思いました。
体毛は殆ど抜けて、大部分の皮膚が露出しています。ところどころ血が滲んでいます。
どんな病に侵されているのか僕にはわかりませんが、もうすぐにも死にそうです。
虫の息です。
多分自分ならこんな時にバタバタして欲しくない。そっとしておいて欲しい。そう思いました。
野生の動物が、人目のつく人家の庭の入り口で行き倒れるなんていう事態は、当事者にとってはよっぽどのことでしょう。

ジッと死んでいくのを待つ、というのも大変です。
見つめながら、「タヌキ汁」の言葉が頭をかすめました。いえ、食べたい、のではなく、こんな姿を見たら食べるなんて気持ちが起きないだろうな、と思ったのです。

寒そうだから何とかしてやりたい、と家内は申すのですが、僕が説得してそっとしておくことにしました。
ただ、夕方から仕事で出かけなくてはなりません。
その前に段ボールの箱かなんかに入れなくてはならないでしょう。

明日は、庭の片隅に穴を掘って埋めることになるのだろうか。

 

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