宮島での話

先ほど、宮島の撮影から戻ったばかり。

今回はTVCFとグラフィックの撮影でした。
どの撮影でもそうだと思うのですが、美しい光の状態というのは、ムービーもスチールも同じ瞬間なのです。ですから、撮影時間に限りがある時は同時にセッティングして、すばやく撮影するべきです。当たり前ですよね。

しかし、今回のように、僕がムービーもスチールも両方撮影するとなれば、それぞれの都合よい場所、アングルなどを考えながらカメラをセッティングできるから良いのですが、これが、ムービーとスチールのスタッフが別々だと結構やっかいなのです。簡単にいうと、場所の取り合い、時間の取り合いなどが生じるのです。結果、お互いが遠慮するか、片方だけが満足することになってしまいます。


「厳島神社」の大鳥居と社殿を撮影しました。
日没後約10分間ぐらいの、いわゆるマジックタイムに、ちょうど満潮でなければなりません。
神社全体に照明を当て、天空と建物との光のバランスを考えながら、最高に美しい瞬間を待ちます。
空の色が明るい青から群青色になり、徐々に茜色に移り変わります。
社殿の下に海水が満ちてくるにしたがって、朱塗りの柱が水面に写って、ゆらゆら動きます。
スチールカメラ、ムービーカメラの2台とも三脚につけて、それぞれのシャッターチャンスを待つ瞬間の緊張感はたまらないです。みるみるうちに空は暗くなって、素早くやらないと撮り逃がすことになります。そのために、スタッフは限りなくシンプルでなければならないのです。思ったような映像を撮る条件は、まずどんなスタッフ構成をするかが肝要です。

たった10分間の撮影時間でも、準備に4日間かかりました。
その準備をしてた最中に、「十文字さんではないですか?」「・・・」「十文字さんですよね?」と通りがかりの女性から声をかけられました。「はい、そうです」と答えたら、「東京都写真美術館の中村です」と言われました。ああ、まさかこんなところで中村さんにお会いするなんて想像もできませんから、お顔を見てもピンときませんでした。すぐにわからなくてごめんなさい。「仕事で来たのですか?」と聞いたら、「そうです、ふふ」といつもの笑顔で笑ってました。

日没まで時間があったので、照明の大坪さんと3人でカフェに入ってお茶を飲みました。
 

 

 

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