茶席

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11/3日、この日は貴重な体験をしました。

北鎌倉に「東慶寺」という名の寺があります。江戸時代に駆け込み寺として有名であり、近年では「禅」の思想を世界に広めた鈴木大拙さんとゆかりの深い名刹です。
僕と寺との関係は、以前この寺で行われた「香席」に参加したご縁で始まりました。
キヤノンEOS5D動画作品「さくら」の茶会シーンを、東慶寺の茶室「寒雲亭」で撮影して以来、何かとお世話になっているのです。
この東慶寺の「寒雲亭」で、11月3日に茶会が行われました。
「鎌倉KOURYU茶会」と名付けられ、内容は、武者小路千家千宗屋若宗匠が1年にわたる「文化庁文化交流使」の大任を務め終えて帰国された記念の茶会です。


若宗匠直門の「碧雲会」「若葉会」「放下会」の3会合同主催で、官休庵の将来を背負っていく人たちが中心になって催されました。手元の書き付けによると「初めての企画と設えに臨む三会合同茶会はちょうど炉開きの時季ですが、日頃の精進の成果をご披露するというよりも、感謝とお祝いの気持ちを込めて共にお茶を楽しむ」とあります。

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本来ならば、官休庵とは縁もゆかりも無い僕などが出席できるはずもないのですが、東慶寺さんとのご縁で、こっそり紛れ込ませていただきました。

実をいいますと、僕は正式な茶事を経験したことがありません。
今までに、撮影を通して茶の湯の作法を、一通り見知っていますが、あくまでも、知っているだけで、自身が亭主になった経験はもちろんのこと、客にだってなったことはないのです。
そんな素人ですから、このような立派なお茶会に相伴する資格はありません。ですが、若宗匠帰国というめでたい席、という理由で、図々しくも、東慶寺さんに無理矢理お願いして参加させていただきました。
若宗匠がニューヨーク滞在中、朝日新聞に寄稿された文章がとても良い内容でした。それで、機会があれば若にお会いしたいとも思っていたのです。

いくら図々しいとはいえ、茶事の進行を妨げるような粗相があってはいけません。
それで、念のために、『官休庵入門』の一冊を借りて来て、前の晩に作法を復習しました。


一通りのことは頭に入れて席に臨んだのですが、思わぬ事態がおきるものです。
考えてみたら、僕が今までに撮影してきた茶事は、すべて小間の席でした。ですから、10人以上が同時に行う「おおよせ」のような席は正真正銘、見るのも初めてでした。それで、濃茶のまえにいただくお菓子の順番が、こともあろうに、僕の席から始まることになってしまったのです。正客のふるまいを見よう見まねで真似ればなんとかなるだろうと高をくくっていたのが、見事に思惑が外れました。縁高の正式な扱いなど知りません。耳のあたりが熱くなってくるのがわかりましたが、前夜の教則本を思い出し、なんとか切り抜けました。う〜ん、時間を作って、お茶を習わなければいかん、と強く思った次第です。それでも、この日の主菓子はおいしかった。手作りのそばまんじゅう。外は寒い風の音が聞こえる時に、作られた方の気持ちが伝わるような、ほんわかあたたかい口当たりでした。

堅苦しいことが少しも無く、楽しく時間が過ぎていきました。点心も手作りだそうで、とてもおいしくいただきました。
ひとしきりおしゃべりの後、さて帰ろうと山門の階段を下りていたら、ちょうど階段の中程で、上がって来る若宗匠とばったり顔を合わせました。「この度はおめでとうございます」と挨拶したら、「ありがとうございます」と丁寧に頭を下げられました。階段下まで下りてから振り返ると、若宗匠の後ろで、着物姿の若い女性が3人急いで階段を上っていくのが見えました。
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