今時の学生たち
3/23日、2010年度多摩美術大学の学位授与式が、行われました。
今年度の卒業式です。
午前中は、全卒業生と関係者が講堂に集まって、厳粛にとりおこなわれる。ということが名目上の式でしょうが、なにぶん、美術大学ですから、多分に学生諸君のパフォーマンスも見られます。
毎年のことですが、仮装した者も何人かあらわれ、場の雰囲気が一変して、どっと笑い声が起こることもあります。
大学院生も含めた各科の代表者が、壇上に上がって証書が授与されます。
午後は、各科がそれぞれ個別に分かれて学科長から直接学位証を受け取ります。その際に学生は学生証を返還することになります。
僕の自宅は鎌倉にあるので、大学の所在地である橋本までは、車で約2時間かかります。この日の朝も集合時間に合わせて、朝7:30分に自宅を出ました。途中、少し渋滞に巻き込まれましたが、10時少し前には大学の研究室に入ることができました。
途中、車のテレビで「仰げば尊し」を主体にした番組が放映されていて、聴くともなく聴いていたのです。
僕は、この「仰げば尊し」という歌を耳にすると、いつもジンとくるものがあります。メロディーでしょうか、歌詞なのでしょうか、子供の頃の担任の先生に特別な思い出があるわけではないのですが、なぜでしょう、胸の奥から熱いものが生まれてくるのがわかります。
ちょうどこの時もメロディーを聴いていたら、なんとなく今年の卒業生一人一人の顔が浮かんできました。
午後3:00頃、いったん式は終わり、夕方の6:30分から謝恩会です。今年も会場は渋谷のセルリアンタワーのボールルームでした。
学位授与式が終わったあと、僕は仕事の予定があったので急いで大学を出て、五反田のイマジカへ向かいました。テレシネ(撮影したフィルム映像を電気信号に変換する作業)です。終わった時は、大学の謝恩会がすでに始まっている時間でした。
謝恩会会場に着くと、何人かの学生に囲まれました。ほとんどの女性は袴か着物です。授業で見知っている普段の教え子とは別人のように、きれいで可愛い。20代前半の女性達は輝くばかりの美しさです。その彼女達が僕を見つけるなり走るように近づいてきて、「先生、ありがとうございます」と口々に言ってくれました。そして、5〜6人の学生は「先生の顔を見ると涙があふれます」と言って、ポタポタ涙を落としていました。きれいに化粧してるのに、まあまあ、なんて思っていたら、今朝の「仰げば尊し」のメロディーが浮かんできて熱い感情が上がってきたのです。いかんいかん、彼女達の涙が感染しそうでした。
「今朝は仰げば尊しの歌を聴いていたら君たちの顔が浮かんできた」と話したら、「先生、そんなこと言わないでください」とぼうぼう泣き出したのです。しゃがみこまんばかりの勢いでした。
こんな時、僕は、いつも、自分が教育者としてふさわしいかどうか考えてしまいます。
授業は週1回、3、4年生合わせて6時間の講義を受け持っています。
僕自身、教育者より表現者でありたいと思っています。授業を優先してスケジュールを組んでいますが、やむを得ない撮影が入ると授業を欠席しなければなりません。講義はお休みです。
ひょんな偶然から、僕は大学教授になりましたが、事前の憶測とは違って、学生達にはいつも助けられます。それは、彼らの、なんでも吸収してやろう、という熱い気持ちです。
出来損ないの大学教授を支えているのは、その時ボールルームで泣いていた彼等たちなのです。
今年の卒業生達には、夏の合宿もしてあげられませんでした。
もっともっと伝えたいことがたくさんあったのですが・・・。
あの天下の十文字美信先生が、多摩美大の授業を持たれている
のは存知ませんでした。学生に『おわら風の盆』を鑑賞させたりするのでしょうか・・?前田美波里さんがテレビで先生を賛美
されておりました。およそ20年程前~銀座ニコンサロンで恐れ多くも、先生の翌週に展覧会を行ったことがありました。
そのうち動画の授業も考えています。
そうでしたか。
20年ほど前の銀座ニコンサロンというと、僕の作品は「黄金浄土」展の時だったかもしれませんね。