おいしいコーヒーと「濃茶」

年が明けてからのスケジュールが忙しくて、なかなかブログが書けません。
何人かの方は楽しみにしてらっしゃるので、書き込むようにガンバリマス。

またまた焙煎の話ですが、浅い焙煎では酸味が強く感じることは以前にも書きました。その酸味をダブルローストすることで、なんとかならないかとテストを重ねていたのです。

僕の直感はある程度は正しかったと思います。2度焙煎することによって、酸味は薄くなったのですが、しかし、同時にすべての味も薄くなってしまいました。
軽い味、といえば聞こえはいいのですが、旨味が消える方向に向かってしまったのです。
僕の感覚では、「薄い」と「軽い」ではあきらかに違います。「薄い」は、文字どおり、味覚成分全体が薄くなった状態で、そのまま進行すれば消えていく方向です。「軽い」は、旨味を構成している全ての要素が軽くなってはいるが消えていない状態、と区分けしています。ダブルローストすることで、酸味は調節できますが、それ以外の成分も平行して薄くなってしまいました。
もしかしたら、僕が知らない、もっと違う方法があるかもしれません。しかし、まあ、1回の焙煎で、自分が思った次元に到達すればいいわけですから、これでいいっていえばいいのですけど・・・。

現時点での「おいしいコーヒー」の答えは、僕なりに一応見つけました。

酸味も苦味も甘味も、つまり旨味のコクがあることが絶対条件、これは誰しも同じだと思います。僕が目指したのは、飲み込んだ後に、その濃い旨味がスッと消えていく。そして、飲み終わった時点で、カップの底に、コーヒー独特の甘い香りが漂っていることです。

こんなコーヒーが作れないかと考えたのです。

僕は、もともと、あまりコーヒーが好きではなかったのですが、多分、それは、本当においしいコーヒーに出会ってなかったからですね。それで、ギャラリーに来られた方に何かお礼の気持ちを込めて出来ることは何だろう、と考えているうちにコーヒー焙煎をやり始めたのですが、味を考えるヒントは茶道の「濃茶」でした。僕は仕事柄、本格的な「お茶」を飲む機会がありますが、その度に、「濃茶の味はなんてすがすがしくておいしいのだろう」と思っていました。そのすがすがしい理由はどこにあるか、と思い返した時に、ひとつは飲み終わりに特徴があると思ったのです。おいしい「濃茶」はいつまでも味を引きずりません。切れがいいというか、どんなにおいしくても、飲み終わった後にいつまでもその味が残っているようでは、品がありません。茶席でいただくおいしいお茶は、次客の方に渡す頃には口中の味の記憶が、スッと消えていきます。その潔さが「切れ味」にも思い至るし、「名残」にも到達していきます。

もし、僕がコーヒーの焙煎をするなら、何か目標がほしいと思い、「濃茶」のことを思い出して、その次元に近づきたいと考えたのです。

ここであまり説明してしまうと「なーんだ」ってことになりかねないので、あまり語りません。話しすぎましたか?多分、来月には鎌倉雪ノ下の「ギャラリーB」で僕の写真展「FACES II」をやる予定ですので、ぜひぜひ来館していただきたいと思います。そして、写真を鑑賞していただいた後で、僕が焙煎したコーヒーを味わってみてください。
 

 

 

3 Responses to “おいしいコーヒーと「濃茶」”

  • 中東佐知子 |

    京都のある信頼のおけるカフェのマスタ-に美山荘で出すコ-ヒ-を注文いたしました。
    私はコ-ヒ-が好きなので私個人の好みと美山荘のイメ-ジ、この環境でいただくことや、料理との関連性など希望を出して、美山荘ブレンドが出来ました。
    もちろん焙煎はしていただいて、豆の状態で買いその都度挽いてます。ぺ-パ-ドリップですが、私以外の者も淹れるので、扱いやすさも考えました。しかし本当に淹れ方ひとつでこうも味が変わるものかと、私自身も毎回納得するものは淹れられません。

    嗜好品であるものこそ、自分に全てが合うと、えも言われぬ幸福感に包まれます。

    先生のコ-ヒ-、楽しみです。

    • Bishin |

      美山荘のこだわりはコーヒーにも共通しているのですね。
      なんといっても、あのおいしい料理がありますから、食事の前と後で、また違った味に感じるのではないかと思います。
      確かに抽出の仕方で味は変わります。その人の人柄まで表れるような気がする時がありますよ。それに、豆を挽いた時の粉の粗さ細かさでまったく味が変わります。次回、「美山荘」にお訪ねした折は、コーヒー談義で盛り上がりましょう。

  • 徐麗 |

    珈琲の話はとっても面白いです!!
    繊細的な味こそ、その大きな魅力ですね・・・
    写真展「FACES II」の日程を決まったら是非お知らせください!!
    先生の作品と美味しいコーヒー、
    とってもとっても楽しみにしています。^o^

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