「甲斐荘楠音の全貌」展
京都国立近代美術館で開催されている「甲斐荘楠音の全貌」展に行った。
32歳の時に、国画創作協会展に出品した「女と風船」を土田麦僊から「穢い絵だ」と出品を拒否された、という。その穢い絵を見てみたかったのだ。
並んだ作品を観ていると、楠音の美に対するひたすらな追求が間近に迫ってくる。現実と幻覚を行ったり来たりするような、自分だけの世界に埋没した挙句の作品に共感した。晩年は商業映画の衣装や美術考証に携わっていたのもわかるなあ、さまざまに人間は複雑な想いの中に生きている。
ただ、女や情念を大きく捉えようとした大作は、抽象や象徴に踏み込んだ気がして残念だった。情念を大作に描いてみたいと思ったのかな。
東京蒲田にある本社ロビーに私の写真が展示してある「高砂香料工業株式会社」の創立者甲斐荘楠香は楠音と兄弟ということもあり、より身近に感じて興味深かった。