おいしいコーヒー(9)、看板
このところ、通常の撮影の仕事以外に、大学入試判定審査があり、大学近くのホテルに宿泊。入試審査はとても慎重に行われます。毎年のことですが、審査の日は大学の教授達と一緒に過ごす貴重な時間で、毎年楽しみにしているのです。それも先日終了して、また日常のペースが戻ってきました。
撮影はあいかわらずの忙しさです。僕の年齢で、コマーシャルの仕事の依頼がくるというのは、本当にありがたいことです。しかし、いつの間にか、どの現場に行っても僕が最年長、ということが多いですね。ついこの間まで、僕が一番年下だったのに・・・。
僕はフリーで撮影の仕事を始めたのが24歳でした。
今から39年前です。
独立した当初は、仕事の現場に入ると、クライアントや代理店の営業の人が僕の助手に向かって、「おはようございます、よろしくお願いします」と挨拶したりしていました。僕と助手を間違えてるのです。その頃は助手とあまり年齢が変わらなかったのです。
僕の初めての助手は「三宅君」といいまして、背が高く、落ち着いた青年でした。
独立する以前に、僕が働いていた「六本木スタジオ」の後輩です。そうだ、彼は現在ではもう60代でしょうから、「君」ではなくて「さん」ですね。当然のことながら、当時、彼に給料を払う余裕がありませんでしたから、僕の助手になるのは無理だ、と断っても、「十文字さんの近くにいたい」と言い張って、そのまま僕の助手になりました。しばらくの間、無給で仕事を手伝ってくれたのです。彼のような人がいたから、現在の僕があります。「三宅さん」の現在は、京都の電気会社の社長さんだと聞いています。
さて、またまたコーヒーの話です。といっても、焙煎については、もうあまり話すことはありません。
豆の種類が変わっても、今では、それぞれをしっかり自分の好みに焙煎することが出来ます。さらに、ちょっとした焙煎の度合いの変化でも、抽出する際の分量、粉の粗さ、粉に当てる湯の注ぎ方の工夫で、対応することが可能です。
考えられるあらゆることを試みていますので、自分の好みの範囲の中で、さらに厳密な調節をしながら答えに導いていくことができます。もうちょっとこうしたい、ああしたい、が出来るようになったわけです。
そんなわけで、コーヒーに関しては多少の自信が出来ましたから、多くの方に飲んでいただきたい、と思うようになったのです。
今年からギャラリーの一隅を使って、コーヒーを味わってもらうことにしたわけですが、ちょっとした問題が発生しました。とても基本的なことです。建物の外から眺めたのでは、そこでコーヒーを飲む事が出来るというのがわからないのです。門柱に小さな表札しか出していないので、近くまで来たとしても、そこが「CAFE bee」だということがわからないのです。考えたら無理ないです。何も手がかりになるようなものがありませんから。本当に僕は無知です、というか、常識的なことが欠如しています。
そこで、3日前に、分厚い板を手に入れて、看板を作ることにしたのです。
仕事仲間である「トライトライ」の斉藤さんから大きな彫刻刀を借り、昨日の仕事終わりで帰宅してから、一晩で彫り上げました。
つい先程、「トライトライ」の小島さんとみゆきちゃんが来てくれて、その看板を店の外壁に取り付けてくれました。
僕のコーヒーを飲んでみたいという奇特な方は、鎌倉駅を下りて、小町通商店街を鶴ケ岡八幡宮方面に約6〜7分歩くと、右側に、昨夜作った「珈琲」の大きな看板が目に入ると思います。
ギャラリーで作品展を開催する前に、コーヒーが先になってしまいましたが、まあ、これも自然な流れだと思っています。
十文字さんの珈琲って・・・
十文字さんがいれてくれるわけじゃないですよね、
マ・サ・カ・笑・驚・感・泣・味
それが実は、僕が自分でいれてます。ただ、カフェに出ている時ですよ。だいたい週末が多いですね。今のところ、大変評判がよろしいです。今まで味わったことがないコーヒーだとの声も聞こえます。官能的な味だ、とも言われました。嗜好品ですから、好みがあるので、すべての人に好まれるとは思いませんが、機会があったらぜひ一度試してください。