上七軒の名妓
京都の花街(かがい)が五カ所あることを最近知ったくらいなので、今まで京都のお茶屋で遊んだ経験がなかった。『京の花街』(日本評論社)という本を著した太田達さんと知り合いになった縁で、せっかくだから、やってみたいことがあると、思い切って太田さんに話してみた。それは、京都で一番古い花街で一番年長の芸妓さんに遊ばれてみたい、と以前から思っていたのだ。その念願が太田さんの肝いりで、ついに実現することになった。
祇園甲部、祇園東、先斗町、宮川町、上七軒と五カ所ある花街の中で、最も歴史が古いのは上七軒だ。その成立は『京の花街』によると室町時代にまでさかのぼる。
北野天満宮の社殿が火事で焼けた際に、社殿を復興造営した用材を使って、門前の松林に七軒の茶店を建てたのが「上七軒」の地名の由来だ。その後、豊臣秀吉が北野天満宮の松原で、例の「北野大茶の湯」を催し、七軒茶屋を休憩所にした。それをきっかけにして茶屋株を許されたのがお茶屋の始まりと伝えられている。「大茶の湯」の後で、秀吉や利休もひととき上七軒の茶屋で遊んだのだ。そんな話を聞くと、なんとなく秀吉や利休が身近に感じられる。
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