2011/03/10

照明名人佐野武治さん

3月4日の昼、サントリー「角」のスタッフより電話が入り、「十文字さん、その声ではまだ知らないでしょ?」と言われ、そこで佐野武治さんの訃報を知った。
スタッフの声は泣いていた。
午前中、京都の知人からしきりに電話が入っていたのだが、仕事をしていて電話に出ることができなかった。
午前中、入院先の病院で亡くなったと聞き、言葉を失った。
残念です。

2月15日、「キンチョール」のTVCFの撮影を一緒にしたばかりだったのですが、それが佐野さん最後の現場だったと聞きました。
とても残念です。
それ以外の言葉がみつかりません・・・。

佐野さんの照明技師としての評価は、国内だけでなく世界的にもトップクラスでした。
映画の世界に関係する人では知らない者はいないほど、名実共に頂点の人です。
特に、黒沢明監督の作品が有名です。「影武者」「乱」「夢」「八月のラプソディー」「まあだだよ」など、「影武者」以後、晩年の黒沢作品のすべてにわたって、照明を担当しました。

黒沢監督がサントリーウィスキーのCFに出演者として登場した折、カメラマンの宮川一夫さんから頼まれ照明を担当したのが縁で、それ以後黒沢作品に関わるようになったと話されていました。
佐野さんは、映画の照明技師として有名ですが、実はTVCFの仕事もたくさんこなしていました。
僕と佐野さんとの関係は、僕が撮影するTVCFの照明をお願いすることから始まりました。

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2011/02/23

「升たか」さんのコーヒーカップ(1)

昨年の秋頃から、ずっと考えていることがありました。
それは、コーヒーカップです。
自分のコーヒーの味がはっきりと決まったので、次はカップをどうするか、思案していました。
なんとなく決めていたことは、なんにでも合うような無難なものは止めようと思っていました。
言ってみれば、アースカラーのような、どの空間に置いても似合ってしまう器は、おもしろくありません。
ただの白いカップもつまらない。
コーヒーは嗜好品ですから無難なもので終わらせたくない。「好き嫌い」だけで決められるものは、思いきって行くところまで行ってみたい、というのが僕らしい、と思っています。
それで、「絵付け」のカップを探していたのですが、なかなか気に入ったものが見つかりませんでした。

「へたうま」は嫌いです。
しっかりした技術、センスに裏打ちされた本当の「絵付け」が出来る陶芸家を探していました。
もっとも、技術があるだけでも駄目です。
冒険してなければ、新しく作る甲斐がありません。
それに、何よりも僕が焙煎して抽出したコーヒーの味、香りにぴったりの世界をイメージできる作家でなければなりません。
いったい、そんな「絵」が描ける人は誰だろう、と日夜考えていたのです。

先日、突然、ある人の姿が浮かんできました。
「升たか」さんです。

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2011/01/05

ベイシー

平泉中尊寺の僧侶、菅野成寛師のことを書いたので、東北にいるもう一人のすごい友人のことを話したい。
一関のジャズ喫茶「ベイシー」のマスター菅原正二さん(通称ベイシー)だ。
ベイシーにまつわるおもしろい話には事欠かない。
すでに伝説的な男だ。

「ベイシー」の店で放たれる「音」を聞くために、全国のオーディオファンが訪れる。

カウント・ベイシー本人から”Swifty”のニックネームをもらう。
JBLの社長以下、同社の有力な技術者が「ベイシー」のサウンドを聴いて言葉を失い、それから毎年通ってくるという。
文章の達人であると同時に、写真にも才能を発揮する。等々。
ベイシー本人の詳しい履歴は、彼の著書『ぼくとジムランの酒とバラの日々』を読んでください。
この本はめちゃくちゃおもしろい。

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