香薬師如来さま
北鎌倉東慶寺に香薬師如来像がある。
縁あって、撮影させていただくことになった。
像高73センチ、銅造で白鳳時代を代表する傑作です。
この香薬師如来像のファンは多く、亀井勝一郎さんが『大和古寺風物誌』で、和辻哲郎さんは『古寺巡礼』の文中に記述があり、また彫刻家の平櫛田中さんは、この香薬師さまを模刻して、朝夕拝んでいたそうです。
ミステリー作家の内田康夫さんの著書に、香薬師さまを題材にした『平城山を越えた女』(ならやまをこえたおんな)がある。
ところが、現在この香薬師さまはレプリカでしか見ることができません。オリジナルは行方不明です。元々は奈良の新薬師寺に安置されていたのですが、明治時代に2度、3度目は昭和18年に盗難にあい、それ以来、行方がわかりません。
海外に流出している可能性もある、かもしれません。
渡会審二写真展「音のない風景」始まる
鎌倉七里ガ浜の住人であり、繊細な質感を表現する写真家渡会審二さんの作品展が、「GALLERY B」で始まりました。
今回発表した作品は、2種の写真で構成されています。ひとつは浜で拾われたガラス瓶を並べたもの、他は水平線と空を切り取った海景です。
ガラス瓶はモノクロとカラー、海景はカラーです。
どちらの作品もデリケートな色彩感覚をよりどころにして撮影されています。
モノクロームの写真に色彩の言葉を使うのはおかしいと思われるかもしれませんが、渡会さんのモノクロ写真は、画面全体が美しい色に満たされているのです。それは被写体であるガラス瓶だけを見つめているからでなく、被写体を包み込んでいる空間ごと、目に見えるようにしたいと熱望した結果だろうと考えます。
渡会さんの目には空気に色がついて見えます。
湿度や密度を色で表現してるように見えます。
ガラス瓶がそこに存在してるのは空間があるからであり、その空間は目に見えないけれど、必ず写真で表現できるはずだと、作品を鑑賞する者に証明してるようです。
そして、繊細な感覚で作られている作品でありながら、展示されている写真はどこか図太いのです。
僕が渡会写真を好きなのは、この図太さです。
デリケートなトーンや質感を大事にするあまり、なんだか全体が神経質で弱々しい作品になってしまい、作品から発する「力」を失った写真も、時には見受けられますが、渡会写真には、ひ弱さは微塵もありません。
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