織部の消息
明けましておめでとうございます。
今年もまた例年の如く質素な床飾りにしました。
侘助も酢橘も自家栽培です。
元々、価値ある古美術を持っていたわけではありませんが、ある時集めたモノ全て手放して、この織部の消息だけを残しました。
新年になると、毎年この消息を飾ります。
内容は織部が開いた茶会に来られた客人への礼状です。
織部の字が好きと言うこともありますが、文面を読んで交互に三人の武将の人生をなんとなく想像するのです。
書き手の古田織部、手紙を宛てた浅野弾正長政、文章に登場する徳川秀忠。
今年は公方様と書かれた徳川秀忠をつらつら想像しました。
秀忠は家康の息子で二代将軍ですが、名前から察するように少年の頃は秀吉の元で暮らしていたとされる。養子というよりは実質的には人質でしょう。秀吉の出自は被差別民とも非人とも言われていますから、最下層階級から天下人まで上り詰めた他に例がない強烈な性格の人物だったに違いありません。さらに子を作る能力に欠けていたかもしれないという秀吉の元で、秀忠はどのような子供時代を送ったのでしょうか。
長じて二代将軍になり、鷹狩りを趣味とし、この時は鶴を手土産に茶会に参る。
織部、弾正長政、秀忠と三人の男が広げる茶会を見てみたい。
もしも撮影したらどのような写真が出来るのだろう。