多摩美術大学十文字美信・最終講義(5)

昨日(1/18)、4年生卒業制作の採点があった。
今年は例年に較べても才能ある若者が多くいたように思う。

今年僕が卒業制作を指導した学生は12人。
現在の写真事情をそのまま反映して、作品の表現世界は多様に広がっている。
フィルムを使って、男女のヌードをモノクロ写真で捉えたオーソドックスなものから、完全なデジタル合成の作品まで多種多彩な作品が集まった。
写真はまさに過渡期、こんな時期に大切なことは若者の可能性を拡げること。フィルムやデジタルというメディアの垣根を越えて、指導者の好みや先入観を越えて接することでしょう。
学生を指導するためには、自分が育ってきた環境から導き出した指導法に対して、常に疑問を持つことです。事前にどんな準備をしたらいいのか、僕自身も試行錯誤してきた10年間でした。

忘れる前に、授業の内容をブログに書き留めておこうと思って始めたのですが、現実の進行の方が速くて、まだ最初の「光と影」の授業の内容を書いただけで中断していました。
続きを書いておこうと思う。

「光と影」の授業は最後にストロボ光源を使ったポートレートをスタジオで実習します。
化粧品広告などで使われるライティングは、主光源の種類を決め、暗部をいかに潰さないで照明するか、です。デジタルになってからは撮影後のレタッチが必要条件になってきますから、明部の情報を飛ばさず、暗部の情報を潰さない範囲で世界観を表現する心構えが必要です。
ある意味、フィルム時代より繊細な関わり方を学ぶべきでしょう。

ストロボの実習だからと言っても、照明に対する考え方は、それまで学んできたタングステンライトと変わりません。
男らしく見える光、女性の肌のきめ細かさを見せる光、大きく2種類の光を見せて、学生にはその印象を書いて提出してもらいます。
方法論と同時に、何故そう見えるかが重要です。
これも、常識や既成概念で判断するな、自分の目で見えた印象を信用しなさい、ということを繰り返し伝えます。

この時に、複数の光源を使ったライティングを実際にやって見せます。
これまでに学生たちに教えたのは最も基本的な1灯のライティングです。
しかし、光源の数が増えようが照明の基本原理は変わりません。
あとは自分たちで応用していくだけです。
ここまでくれば、写真撮影のための照明は面白いようにわかってきます。
熱心な学生は飛躍的な進歩を自覚して、どんどん興味を深めていくのがわかります。
指導者の醍醐味を感じる瞬間です。

次回は次のテーマ、「顔」の授業について書きます。

 

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