トークイベント
9/25日、「劇顔」と「FACES」のトークイベントが行われた。
会場は多摩美大美術館。
100人ぐらいの聴衆を予定していたらしいが、立ち見が出るほど盛況でした。
自分一人だけなら、ショボショボの人数でもかまわないけど、今回はゲストが4人もいらっしゃるので、もしも、聴衆が集まらずに、会場がガラガラだったらゲストの方々に申し訳ないなあ、と心配していたので、ひとまずホッとしました。
司会をお願いした演劇ジャーナリスト尾上そらさんが手際良く進めていただいたので、話す我々も流れに乗って話しやすかった。
ゲストの一人であるアートディレクター太田和彦さんとは、もう39年のお付き合いです。
僕は24歳の時に、まがりなりにも写真家とし
てデビューしたのですが、雑誌『anan』誌上で発表した写真を見て、彼はすぐに連絡をくれました。
太田さんは当時、資生堂の若き俊英デザイナーとして頭角を現していました。
その頃の僕は、広告の仕事をやるなどと考えてもいなかったので、太田さんの名前も知りませんでした。
電話を受けたあとで、家内に「俺が広告をやるんだってよ」と話したのを覚えています。
自分の資質が、多くの人を惹き付けなければならない「広告」に向いているとは思えなかったのです。
記憶、夢、ノスタルジー、暴力、自殺、不自由であること、現代音楽、舞踏、などなどに自分の内面がどう関わっていくかと考えていたので、「広告写真」を撮ることになるとは思えなかったのです。
太田さんと一緒に初めて撮影した資生堂広告は「ボツ」になりました。
しかし、結果的にその仕事はシリーズになり、1年後には広告の世界の大きな賞をもらいました。
そのあたりのいきさつは、求龍堂から出版された太田さんの作品集『異端の資生堂広告/太田和彦の作品』を読まれるとよくわかります。
トークショーでは昔の話は出ませんでしたが、おもしろいエピソードは盛りだくさんです。
いつか、その時の心持ちを思いっきり話してみるのもいいね。
もうすでに忘却していることもたくさんあると思いますが。
今回展示した作品の一つ「劇顔」は、雑誌『シアターガイド』で毎月連載している写真をまとめたものです。
1999年から始まったので、もう11年が過ぎました。
現在も続行中。
ゲストの一人、伊藤芳樹さんは『シアターガイド』の主宰者です。
「劇顔」(げきがん)のタイトルは、そもそも伊藤さんから発せられたと聞きました。
最初にこの撮影の連絡を受けた時に、タイトルの面白さにも惹かれたのを覚えています。
伊藤さんとは太田さんを通じて付き合いが始まりました。
僕は普段、車を運転してるので、酒席を共にする機会が少なく、伊藤さんと飲むのは年末の打ち上げになりますが、豪快さと緻密さを合わせ持った配慮に見習わなければならないことが多いです。
今回のトークイベントでも話されましたが、「劇顔」撮影現場の空気の読みの確かさは、やはりなかなかなものがあります。
尾上そらさんとシアターガイド編集者の大高由子さんから、その日に撮影する役者のさまざまな情報を得ます。
それを元に、撮影の具体的なシュミレーションを組み立てていきます。
「劇顔」の撮影を始めた当初は、芝居を観劇してから撮影に臨むようにしていましたが、ある時から、むしろなるべく観ないで撮るようになりました。
役者に対する先入観を捨てるためと、出演している芝居と撮影する数分間は違うドラマにしたいからです。
役者が僕の前に現れた瞬間から、撮影が終了して去っていかれるまでの数分間は毎回、新鮮な体験です。
撮影前のシュミレーションを具体的にすればするほど、現実は僕の想像を裏切っていきます。
その静かな慌てふためきが、「劇顔」写真のドキュメント性を裏打ちしています。
2時間近いトークイベントでしたが、まだまだ話し足りない気がします。
それに、今回は「FACES」の作品についての話しが出来ませんでした。
また機会があるでしょうから、その時の楽しみにしておきます。
今回の「劇顔」と「FACES」の写真展トークイベントに参加された皆様には、この場を借りてお礼の気持ちを伝えたいです。
10月17日の最終日になってしまいましたが、「劇顔」と「FACES」の展覧会に行って来ました。
今回も本当に素晴らしい作品達で、特に「劇顔」の作品を大きなサイズで、沢山の写真を一度に見るのは始めての事だったので、展示室に入ったとたん、その世界に引き込まれてしまいました。
強くて、鋭くて、でもどこか寂しげにも感じる、役者さん達の「目」が、特に私には印象的で、それぞれのメッセージが聞こえてくるようでした。
その中でも、染五郎さんの写真は生きているみたいで、そこから飛び出て来そうな感じで、ちょっと怖いくらい。。
動画ではなく、一枚の一瞬の写真の中からこんなにも多くの事が伝えられるのですね。
いつも十文字さんの作品展に行くたびに、毎回違った感覚の感動をします。
そして「いったい自分は何をやってきたんだろう。。」と、考えてしまいます...。
「FACES」は鎌倉のギャラリーでの展覧会とはまた違った感覚で見る事が出来ました。場所、照明、並び方によっても写真の見え方は違って見えるものですね。新作のFACEも見る事が出来ました。
私はFACESの写真の微妙な色合いがとても好きです。カラーなのに、普通の色とは違っていて、その優しい色と、不思議な顔に引き込まれてしまいます。
今回はトークショーに行けなくて、とても残念でしたが、最終日の夕方にゆっくりと堪能出来ました。
そして、思いもかけず十文字さんにお逢い出来て、作品の説明をして頂けたので、とても嬉しかったです。
ありがとうございました!!
そして大坪さんにも偶然逢ってびっくり!
また十文字さんの作品に逢える機会を楽しみにしています。
そして、なまけ者の私の背中をいつも押して下さって、ありがとうございます。。
秋も深まり、少し肌寒い季節となりました。
どうぞご自愛なさって下さい。
今度は鎌倉へ、美味しいコーヒーを頂きに伺います!
Beauty :)
久しぶりにお会いできて嬉しかったですね。
ビューティーは、僕にとって安心出来るスタッフの一人なので、家族に会った感覚に似ています。
最近、やっと写真で表現したいことが解ってきた気がします。
やはり、写真を撮り始めた当初から感じていましたが、答えをさがすのではなく、その過程を提示するのが、僕に出来ることだと思います。
心の中に沈んでいることがらのひとつひとつを、丹念に、見える場所まで持って来る作業だと思います。
また、写真を撮ったら、見てください。