おいしいコーヒー(10)、まとめ

コーヒーについて、いろいろ書いてきましたが、そろそろまとめてみます。

おいしいコーヒーを飲むための条件は、大きく分けると3つあります。
(1)生豆 (2)焙煎 (3)抽出 です。
その重要度は上記の順番だと思います。
たいていは、抽出を工夫するだけでしょうが、この3項目が揃わないとおいしいコーヒーにはめぐりあえません。

なんといってもまず生豆の品質が問題です。産地まで出かけてチェックするわけにいきませんから、信用できる輸入業者から仕入れることが肝要です。
いくら焙煎技術、抽出技術が優れていても、上質な生豆でなければおいしいコーヒーにはなりません。

品質の高さ、安定性、価格、品揃えなどが必要です。しかし、高い品質をどう見分けるか、というのはなかなか難しい。その豆がどんな環境を経て手元にあるか、までは正確に把握できないからです。そのためにもこちらの質問や疑問に親切に答えてくれる業者を探すことです。
豆そのものの状態は、ある程度であれば見ただけでわかります。色、形、大きさ、など、程度のいい豆はきれいな顔をしています。これも、経験でわかってきます。
自分の手元へ来てからの環境も考慮に入れる必要があります。高温多湿は厳禁ですからその逆の乾燥した低温で管理すべきです。
コロンビアならコロンビアの豆を、数社から取り寄せて比較してみるとどの業者が優れているか見当がつきます。それに、機会があれば、自分が普段使っている豆と、町で出会ったコーヒー店の豆をなるべく比較するようにして、自分が使っている生豆の状態を常に気にしておくべきでしょう。
僕は、自家焙煎の看板を見つけると、時間が許せる限り、直接豆の状態を自分で見て確かめます。

焙煎に関しては、今までさんざん書いてきたので、これ以上付け加えて言うことはありません。
ただ、僕の感想では、最も必要なことは、自分のおいしさの条件を見つけるべきだと思います。そのコンセプトに従って適切な焙煎方法を探ったらよいでしょう。僕の場合のおいしいコーヒーとは、酸味、甘味、苦味、のすべての味が揃っていて味の切れがよいこと、飲み終わった後でカップの内側に甘い香りが残っていること、を中心に考えました。そのコンセプトに従って焙煎方法をいろいろ試してみたのです。言い方を変えると、いかにもやさしい味のコーヒーではつまらないと思ったのです。いわゆるおいしいコーヒーは、今までにも名店といわれてるお店で充分味わえるでしょう。せっかく門外漢の僕がやるので、フレッシュな豆の味がするコーヒーを体験してみたいと考えました。それには火の温度がとても関係してきます。低温でゆっくり焙煎すると、やさしい味になりますが、僕的にはつまらないコーヒーです。失敗を恐れずに、強い火力で一気に焙煎すると、豆のフレッシュさが保たれた状態で仕上げることができます。と言っても、完了までに細かい火の調節があるのですがこの場で書ききれません。

僕がやっている焙煎器具では、豆の温度を計ることができないし、途中の経過を目視することもできません。豆はドラムの中に入ってるので、見えないのです。しばらく経験を積むまでは、途中で何度か外へ出して焙煎度合いを確認していました。おかげで、自然にダブル焙煎も経験できました。では、見えないのにどうして焙煎の進行が解るかといいますと、それは「音」です。焙煎が進むに従って、爆ぜる「音」がするのです。どんな種類の豆であっても途中で「パチパチ」と爆ぜる音が聞こえるのです。豆の種類、水分の含有度によって音は違いますが、それも経験によって聞き分けることができます。もちろん、集中しなければ聞き分けられないですよ。僕は勝手に「音」に名前を付けています。「イチパチ」「ニパチパチ」「サンミチ」と呼んでいます。

焙煎の進行に従ってサウンドが異なってくるのです。ある程度焙煎が進むと、豆に含まれている水分が放出されますが、その時が最初の「イチパチ」です。それから数分後に「ニパチパチ」が始まります。最初とサウンドは似ていますが、もっと乾燥した音です。それに、音の間隔が違うのです。パチパチ音が早まるのです。たいていのコーヒー店ではこの段階で終了ですが、ここで止めると微妙な甘味が出ません。次の「サンミチ」まで進まないと僕の好みのおいしいコーヒーにならないのです。「ニパチパチ」の後で、よ〜く聞き耳を立てていると「ミチミチ」音が始まります。この音を聞いて瞬時のうちに終了させないとあっという間に焦げてしまいます。最初の頃は部屋中煙で充満させたことも何度かありました。今では失敗することはまったくありません。

次の抽出ですが、これもおいしいコーヒーを飲むためには大事な要素です。
僕はネルドリップを使っていますが、抽出技術を求められるのはネルドリップが一番です。やり方一つで味を変えることが出来るのでおもしろいのです。気をつけなければいけないのは、急いで抽出しては駄目です。ゆっくりいれることが肝心です。あわてて湯を入れすぎると、ネルの中に湯だまりができます。この状態で続けると苦さが増します。コーヒーの粉と湯が接触してる時間が長いほど苦さが出てきます。抽出の初めに酸味が、後に苦味が出ると思って間違いないです。抽出の基本は、ネルの中の粉はすべて抽出する感覚。ネルの中央は粉の層が厚く、周囲に近くなるに従って層が薄くなります。抽出時にこの差を無くすように工夫してください。ただし、湯を注ぐ時に直接湯を布に当てるのは厳禁です。いっぺんに味が薄くなります。
それに、一人用サイズの抽出ネルでいれる場合と、複数用サイズの大きなネルを使う場合では、工夫しないと同じ味にはなりません。同じ焙煎の豆で、同じいれ方をしても、小さなネルを使った一人分の粉では味が淡白になります。僕の場合をいうと、複数用はグラム数とミルの番号で調節します。一人用のグラム数をそのまま人数分の倍数では濃度が濃すぎてしまいます。さらに、味の濃度を揃えるために、粉が多くなるに従ってミルの番号を大きくしていきます。これらの程度は経験と好みで決めるしかありません。

豆を粉砕するミルも重要です。
ミルには、粉砕する粗さに準じて番号が記載されています。厳密に言えば、豆の種類、焙煎の度合いによってミルの番号を変えなければなりません。粉が細かいほど、表面積が増え、抽出される要素が増します。が、しかし、それだけ雑味も抽出されるのです。さっぱりさせるには粉を粗く、濃度を濃くするには粉を細かく挽くことが必要だと覚えておけばいいでしょう。初心者は粗く挽いた粉を多い分量で抽出すればおいしいコーヒーが飲めます。
僕は、ミルの機械的外観と音にこだわって古いものを探していました。現在のものは性能が優秀で回転数が速すぎるのです。そのために粉砕時の音がうるさくて嫌いです。あまり速い回転数で豆をカットすると、カットされた豆の断面に熱を持つ気がしていやなのです。最近、やっと気に入ったミルを見つけました。

おいしいコーヒーを飲もうとすれば、奥が深いのです。
正確には書ききれませんので、飲んでみるしかありません。興味ある方はぜひ鎌倉まで来ていただいて、試飲してください。
僕が焙煎したコーヒーは、なかなかおもしろいコーヒーだと思います。

 

 

2 Responses to “おいしいコーヒー(10)、まとめ”

  • 徐麗 |

    とっても美味しかったです。珈琲!
    苦みの中にやさしい甘みと口当たりはまろやかで、シルクのような柔らかさ。。。のどこしもすごくいい感じ!チャーミングな味です。カップに残された豆の香りも甘いです。
    こんな繊細な味は大好きです。
    また、飲みに行きたいです!!!

    • Bishin |

      ありがとう。
      それはよかった。コーヒーに気持ちをこめた甲斐がありました。
      そう言っていただけると、次のステップに進むやる気が湧いてきます。
      またぜひ、飲みに来てください。

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