「出現」と「時間」

応挙が描いた孔雀絵

今回開催する資生堂ギャラリーでの展覧会、メインテーマを「出現」に決めた。

(応挙が描いた孔雀絵は圧倒的です。凄い障壁画を前にして写真を撮る意味はあるのだろうか?圧倒的であるって、圧倒されたこの感覚を写真に定着出来ないだろうか?)

日本間における特徴の一つは、襖を開けると次の間に描かれている全く異なった世界が現れることだ。大乗寺の場合で言うと、源埼描くところの老梅の襖を引き開けた瞬間に芦雪が描いた猿が現れるのだ。当たり前と思うかもしれないが、今まで見えなかったものが眼前に出現するというのは、いつの場合も私にはショックだ。事前に何が現れるのか知っていればショックは小さいけど、知らなかったら尚更わくわくする。

一瞬で世界が変わるのも衝撃的だが、ゆっくりと少しずつ何かが変わっていくのも私にはたまらない快感だ。しかも、変わっていることに気づかなかったとしたら、まさに今生きているこの世の中的ではありませんか!そして、変化していることに偶然気がつき、気がついた自分を自覚した時は大袈裟でなく震えます。

いつの間にか心の中に浮かび上がってくる映像もこれと似ていて、これはこれで自分にとっての真実なのです。

応挙が描いた孔雀をジッと見つめていたら、私の心の中にゆっくり時間をかけて浮かび上がってくるものがありました。

見るからに鮮やかな、誰が見ても同じように受け止められる親切な映像ではなく、見たいという積極的な気持ちになって初めて見えてくる映像を作りたかった。もしかしたら、何も見えないじゃないかと立ち止まる人もいるかもしれない。あるいは「これは何だ?」のクェッションマークを抱えたまま、帰路に着く方もいらっしゃるかもしれない。それらを含めた全てが今回のインスタレーションだと思っています。
裏のテーマを「時間」にしました。

展示した写真そのものも「時間」を表現しようと試みたのですが、それよりも作品を観賞している時間が経験に進化していけたら本望だな、その時間を包摂してこそ展示すべき作品だと思ったのです。

何を言いたいのかわかりにくいでしょうが、とにかく会場に来て観ていただきたい。言葉では説明しにくいのです。

これも私にとっての写真です。

8/27日(火)から始まる資生堂ギャラリーでの展示をぜひ多くの方にご覧いただきたい。

2024/8/27~10/20.開催の展覧会・空想の(そら) 「静寂を叩く」 大乗寺十三室|十文字美信 プレスリリースを発行しました。


 

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