写真と珈琲のバラード(2)

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前回、珈琲カップの撮影について書きましたが、少し付け加えたいことがあります。器を撮るなら何といっても自然光がいいです、の話をしましたが、もうちょっと詳しく説明すると、太陽光が相応しいのは主たる光、主光源です。ところが、主光源以外の、業界用語で言うところの「おさえ」の光は私の場合、タングステンやハロゲンを使うことが多いです。自然光と人工光のミックスで撮影するのです。理由は、写真の特性を活かすためです。

私が考える写真の魅力に「ごちゃごちゃ混ぜ合わせる」があります。整理しない、片付けない、捨てない、です。引き算より足し算です。せっかくそこにあるものを退けてフレームの外に押し出さないこと、です。光もそのように考えます。むしろ積極的に性格の違う光を混ぜ合わせるのです。

今回、珈琲カップを撮影したのは、Cafe beeの室内の窓際を選んでセッティングしました。カップを撮るための主たる光は窓からの自然光ですが、店内を照明してるのは天井に設置したハロゲンランプです。光の環境をそのまま撮影すると、自然光とハロゲン光とのミックスになります。強さは圧倒的に自然光ですが、今回はモノによって、さらにタングステン光を足して撮影しました。何故そのようなことをするかと言うと、光の色を混ぜ合わせて撮るためです。

通常、太陽光は色温度が高く、感光すると青みがかった色になり、それに比べてハロゲンやタングステンは色温度が低く、黄色味の色になります。撮影の場合は色味の想定がつきにくいので、色温度を揃えて撮影することが多いのですが、私は敢えて光源をミックスして撮影します。その効果の度合いはカメラの色温度設定によって自在に変えることが出来ますし、経験によって予測がつきます。青味を強くしたり、あるいは部分的に黄味がかった色調を強調したり、マゼンタを感じさせたりさまざまです。珈琲カップのように飲み物の場合は、少しだけ暖色を感じたほうが美味しそうに感じますし、画面の色彩に厚みが出てきます。

色彩に限らず、写真というのは、何にしてもスッキリ整理せずにゴチャ混ぜのほうが発見があって面白いと思っています。
上記の方法で撮ったカップの写真をアップします。これは1800年代後半と思われるイギリス製。19世紀にヨーロッパで流行したシノワズリ(東洋趣味)の図柄。丸窓に手描きされた赤い鳥がなんとも可愛い。


 

One Response to “写真と珈琲のバラード(2)”

  • 小谷良司 |

    ため息です。
    これぞ、風光明媚。
    光を操る、
    心境も、技術も、理解も、何も持ち合わせませんが、
    だからこそ、この歳で、ため息。
    写真を勉強したくなります。
    ありがとうございます。
    また、お邪魔いたします。

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