高倉健さんと永谷園

本日(7/3)読売新聞朝刊に、永谷園の「お茶づけ海苔」60周年企業広告が見開き30段で掲載されました。
登場しているのは俳優高倉健さんです。

僕が高倉さんと初めてお会いしたのは、ネスカフェのコマーシャル撮影でした。今から20年以上前のことです。それから日本生命、JRA、富士通、麒麟麦酒など、何本かの仕事をご一緒しました。ほとんどが動画とスチールの両方を撮影しましたので、かなりの数量の撮影をしたことになります。スタジオ、ロケ、場所も国内だけでなくイタリア、フランス、ハワイなど、海外ロケもご一緒しました。その度に高倉さんの役者魂というか、プロとしての根性に感動したことも度々でした。

今だに忘れられないシーンがあります。
JRAの撮影で北海道ロケの時のことです。


高倉さんは撮影の前に必ず現場を自分の目で確かめにいらっしゃいます。僕の撮影の時は必ずですから、すべての現場でそうされてるのではないかと思います。その時は撮影前日で、強い雨が降っていました。これだけ強い雨だから、もしかしたらチェックに来られないのではないかとも思っていました。冬が近づいていてかなりの寒さでした。僕らスタッフ全員、緊張しながら高倉さんを待っていました。約束の時刻ピッタリに車が止まり、ドアを開ける高倉さんが見えました。僕らが待っている現場まで4~50mはあったでしょうか。高倉さんは傘も差さずに、そのまま走って向かって来るのが見えました。一刻も早く現場をこの目で見たい、少しでも早くスタッフを確認したいとの思いだったのでしょう。運転手や代理店の人たちが傘を持って後ろから高倉さんを追いかけています。一瞬のうちにずぶ濡れになった高倉さんを見て、僕たちスタッフは、全員、差していた傘をその場に投げ捨てていました。

それはその時、現場にいない人にはわからない感覚かもしれません。高倉さんがずぶ濡れなのに、僕たちが傘など差していられない。高倉さんに気を遣ってるからではなく、高倉さんという人は、日本映画界の至宝、不世出の俳優です。その方がずぶ濡れで走っているのに、みたいな気持ちだったでしょうか。高倉さんに会えば誰でもがそのような尊敬に似た感覚を持つのではないでしょうか。あれだけ仕事に情熱を傾ける俳優さんはいないでしょう。その分だけ仕事に対しては厳しいです。他人に厳しいのでなく、ご自分に厳しいから、周囲の人は誰かれなく、全員全力です。自分が持っているものを全て総動員で立ち向かわざるを得ないのです。

今回の永谷園の仕事は、高倉さんとご一緒する久しぶりの仕事でした。
誰でも知っている高倉健は、ある程度若い頃の高倉健のイメージではないでしょうか。現在81歳です。僕がこの仕事を引き受けた時に真っ先に思ったことは、「81歳の高倉健を撮りたい」でした。今の高倉さんの魅力をあらためて見つめてみたかったのです。
81歳でも高倉さんは、高倉健なのです。高倉健以外の何者でもないのです。

難しい仕事でした。とてもやりがいある大変な仕事でしたし、面白い仕事でした。
そして今回もまた貴重な経験でした。
TVCFは7/1から放映中です。TVの映像を観て、また今日新聞広告を見て、少しは肩の荷が下りました。

高倉健さんと永谷園の皆さんに感謝の気持ちで一杯です。

「ありがとう ございます。」

 

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