作品展「FACES lll」「神殿」

DM_A

作品の展示は昨日で終わりました。解説やネームはこれからです。

いつもいつも、ぎりぎりになってしまいます。

展覧会の展示の度に思うのは、自分が撮った写真なのに他人の作のように感じてしまうことです。自作を前にしてるにもかかわらず、ちょっと不思議な感覚です。まったくの他人が撮った写真を見てるとも違うのですが、どう説明していいのかむずかしい。その作品を撮影している間の興奮はありません。どう撮ろうか、あれこれ考えている時の熱気みたいなものは無くなっています。醒めている、とも違って、写真が僕から少しずつ離れていってる感覚です。特に、展示してる時に顕著にあらわれる感覚です。

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自分が撮った写真に間違いないのに、僕とは関係ない思いを作品が持ち始めているような気がします。作品が勝手に生き始めてる、とでも言ったらいいのでしょうか。作品そのものにエネルギーがあるものと、割合つつましい作品とがあって、僕から離れていく行き方も違いますし、いつまでも僕から離れたがらない作品もあります。僕だけにしか感じない勝手な感想ですが。


今回は2つの作品を同時に展示しています。被写体はそれぞれ違いますが、写真をとおして表にあらわそうとしているものには共通点があると考えています。

僕は写真家になろうと決めた時にある思いがありました。『感性のバケモノになりたい』にも書いたのですが、目の前に見えているものを写すだけなら写真は面白くない、と感じていました。目の前に存在しているものがつまらないのではなくて、その見えるものをとおして、見る人の心の領域にまで踏み込む覚悟が必要だろうと思ったのです。それをなんと言っていいのか正確な言葉が見つからないので、「見えるものをとおして見えないものを撮る」と言ってました。

そこに到達するには、存在しているものを正確に観察する能力が必要です。この正確というのも結構やっかいで、ともすると「リアリズム」と混同しがちです。僕が決めていることのひとつに、観察する時点ではまだ表現しないということがあります。

写真で表現する「見えないもの」とは何だろうか、と考えていたのですが最近こんなふうに思います。写真の場合は、多分にノスタルジーに影響されるのではないか、ということです。このブログの冒頭に戻りますが、写真についてあまり言葉を尽くして説明すると、作品がまたまた離れていきます。

以下に、今回の展示のために書いた文章を載せます。


「FACES lll」

2008年から「顔」を主題にした作品を撮り続けていますが、今回展示した写真は石仏です。所蔵されている寺からは、鎌倉時代の作だと聞いていますので、もしそうであれば現在の仏のお顔は、700年近い時間の風雪が作ったといえます。造立当時の目鼻は消えてしまいましたが、むしろ、造形の部分が消えたことによって、私の心の中に新たなお顔が浮かび上がってきます。そのあらわれた新たなものは、記憶やノスタルジーや希望など、体験から導きだされた表情のさらに奥にあるものだと思います。

「神殿」

花は盛りだけが美しいわけではありません。枯れ落ちていくまでの、どの瞬間も見応えがあります。徐々に退色していく過程のそれぞれに、新しい色名前をつけたくなります。かたちにしても、花がまだ若い間は、花だけのかたちですが、時間がたつにしたがい、重力や環境に寄り添って、えもいわれぬ造形に変わっていきます。その時々の、想像を超えた、神妙な姿に心をうばわれるのです。

興味を持たれた方は、ぜひギャラリーに足を運んでください、お待ちしています。

そして、僕が焙煎したコーヒーも試してください。

 

 

11 Responses to “作品展「FACES lll」「神殿」”

  • 大坪 彰 |

    十文字さん。案内状ありがとうございます。
    今度の正月は鎌倉でゆっくり過ごします。ここ数年正月は九州でしたので久しぶりと云うか初めて鎌倉で過ごす正月です。
    作品楽しみです、珈琲も!

  • Bishin |

    来る新年はよい年になるよう願っています。
    鎌倉の正月もいいですよ。ぜひ作品を見てください。
    今日から正月用のコーヒー焙煎を始めました。正月用のブレンドも楽しんでやっています。

  • 曲藝 |

    明けましておめでとうございます!
    先生の新しい顔への解釈、楽しみしています。
    今上海にいますが、日本戻ったら観にいきます。
    ことしも宜しくお願い致します!

  • Bishin |

    今年もお互いにどっぷり写真につかりましょう。
    日本に戻ったらぜひ観に来てください。曲君の新しい作品を楽しみにしています。

  • 喬 宣 |

    あけましておめでとうございます。
    昨年鎌倉へお邪魔すると言っておりましたが、震災以来連絡が途絶えてしまって申し訳ございません。
    今回の展示こそお邪魔させていただきます。
    お会いするのを楽しみにしております。

  • 喬宣 |

    明けましておめでとうございます。
    先生ご無沙汰しております。
    展示会を日曜日に伺いたいのですが、先生はその日いらっしゃいますでしょうか?

  • Bishin |

    一日中ギャラリーかカフェにいるので、いつでもいらっしゃい。

  • 橋本菜美子 |

    こんにちは、ご無沙汰しております。橋本です。
    先日、展覧会にお邪魔してきました。残念ながらお会いできませんでしたが、お忙しくされていると奥方様に伺いました。
    お贈りしたお花がとてもきれいに植え替えていただいてあり、お心遣いにとてもうれしくなりました。
    また、コーヒーをいただきに伺います。
    寒い時期ですのでお体くれぐれもご自愛ください。

    • Bishin |

      お花をありがとう。大事に楽しんでいます。せっかく来ていただいたのに、会えなくて残念です。また遊びにいらっしゃい。

  • 川崎徹 |

    ごぶさたしています。作品自分の目で見たいのですが、締め切り仕事に追いつめられていて鎌倉まで行けず、です。展示についてのお考え、深く納得しながら拝読しました。いずれまた。

    • Bishin |

      連絡ありがとうございます。しばらくお会いしていませんが、またいろいろお話したいですね。いつか鎌倉まで足を伸ばしてください。待ってます。

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