おいしいコーヒー(4)とギャラリー

連日、コーヒーの焙煎を繰り返しているうちに、幾つか気付いたことがあります。
焙煎の度合いは火力と時間の相関関係で決まりますが、焙煎の度合いと関係なく、豆の体積の変化がある事が解ってきました。深い焙煎であったとしても、豆があまり膨らまないこともあれば、少々浅い焙煎でも結構豆が大きくなっていることがあります。この豆の体積は火力と関係がありそうです。火力が強いと豆は膨らむのです。それに、豆の表面に浮いて来る油脂も火力の温度に関係がありそうです。
僕は専門の焙煎機で行っているわけではないので、進行に合わせて、豆の温度を計るわけにいきません。見た目でどこまで焙煎の特徴をつかむかにかかっているわけです。

本当は、時間に合わせてその都度、豆の温度のデーターをとりながら進行していけば、ある程度の結果は出るはずです。しかし、家庭でやっているわけですから条件は限られています。見た目でやらなければならないから面白い、とも言えるのです。豆が抱いている湿気によって上がりの時間は左右されるので、時間的に一定の決まった法則はありません。ただ、酸味と苦みというのはある程度の法則はありそうです。まず、酸味は浅い焙煎の方が強く感じます。それにひきかえ、苦みは深い焙煎の方がより感じます。酸味に関しては、それでいいのですが、苦みはどうも時間ではなくて、色素だと思います。色の濃度が濃いほど、つまり、黒に近いほど味は苦く感じます。


コーヒーの「甘み」というのも大変個人差があり、煎じ詰めれば、そもそも「甘み」とはなんぞや?まで行き着きます。「甘み」とは、コーヒーの場合でいえば、「コク」と解釈した方がわかりやすいのではないかと思っています。「コク」を構成している要素の一つといってもいいです。甘い味は個人差がありますが、「甘み」に関していえば、「香り」は案外誰しも共通しているのではないでしょうか。「甘い香り」です。特に、コーヒーを飲み終わって、カップに残っているかすかな「甘い香り」を楽しんでいる時は、贅沢な時間です。
僕がコーヒーで大切に考えているのは「甘い香り」です。

豆の種類は、現在7種類取り組んでいます。
コロンビア(有機)
ブラジル
ケニア
コスタリカ
グァテマラ
インドネシア
それに
コロンビアクラシコ
です。
それぞれの適切な焙煎度を見つけようと努力しています。


このところのコーヒーの焙煎に対する執着は、写真を始めた頃の自分を思い出します。ひたすら自分が写真で表現出来る世界は何だろう?と考えていました。それに、動画を始めた時のリモートヘッドに対するアイデアや使いこなすための猛練習も思い出します。まだあります。立体映像に凝った時もそうでした。自分で撮影方法を考え出して、ついには特許も取りました。僕の性分として、始めたら、行くところまで行かなければ気がすみません。

連日、朝晩、焙煎を繰り返しているうちに、一応の結論は出せそうです。

何故コーヒーの焙煎にこだわっているかというと、ギャラリーと関係があるからです。

僕は今、現代美術を展示するギャラリーを作ろうと計画しています。現代美術といっても、今のところ、写真作品が主体になると思います。僕の専門が写真だからです。最近は、動画映像も作っているので、動画映写設備も備えなければなりません。
ギャラリーを作って、作品を展示する計画はずいぶん前から考えていて、建物自体は2007年に完成していました。ただ、僕の仕事が忙しくて、建物は完成しても、それ以外に必要な事は手つかずの状態で今日まできてしまいました。


ギャラリーの場所は鎌倉なので、都心からはちょっと離れています。都心に住んでいる方がギャラリーに来るには、わざわざ来てもらわなければなりません。それで僕としては、ギャラリーに来られた方に何か「おもてなし」が出来ないだろうかと考えていたのです。もちろん、作品を見に来られるのですから、良い作品を作って展示することが何より重要です。しかし、来館された方とせっかくお会いしたのだから、何かちょっとした心づくしの「おもてなし」は出来ないのだろうか、と考えていました。何かいい方法はないのだろうか、何かないのかと考えていたのです。「茶席」や「香席」を設けることも真剣に考えた時期がありましたが、あまりにも大げさです。適切なアイデアがないまま最近まできてしまいました。

ところが、数ヶ月前にコーヒーの焙煎に出会い、ギャラリーに来られた方に、自分で焙煎したおいしいコーヒーを飲んでいただけたら、少しは「おもてなし」になるのではないかと考えたのです。優れた作品を鑑賞した後で、一杯のおいしいコーヒーを飲む。これなら、鎌倉のギャラリーまでわざわざ来た甲斐が、少しはあるのではないかと思ったのです。まだまだ写真のレベルまでいってないかもしれませんが、コーヒーも相当なレベルまで引き上げる覚悟でいます。ひょっとしたら、写真を凌駕する勢いで取り組んでいます。鎌倉のギャラリーが、写真を鑑賞すると同時に、コーヒーの蘊蓄みたいなものまでも傾ける場になったら面白い空間になると思いました。

現在はまだ過程の段階ですから、完成して現実化するにはあと少し時間が必要です。

来年の早い時期に実現しようと考えています。

 

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