ぼんぼり祭り
今年もぼんぼり祭りが近づいてきました。
鎌倉鶴ケ丘八幡宮の夏の風物詩です。
毎年、八月七日から九日までの三日間、参道の両側から境内まで、約四百基のぼんぼりが灯されます。これらは八幡宮から依頼された各界の方々によってさまざまな図案意匠を凝らしたものなので、なかなか味わい深い祭りです。薄暮の頃、巫女さんの手で、一斉に蠟燭の火が灯される光景は、風情があって僕は好きです。
八幡さまに言われて、三年前から僕もこの祭りに参加するようになりました。
しかし、今年は仕事に追われて、ぼんぼり制作に着手できず、ついに締め切りの七月二十日を過ぎてもまだ手つかずの状態でした。それで八幡さまにお願いして、お渡しするのを月末まで延ばしてもらったのです。
七月二十四日、CF撮影準備のために(この仕事はとてもドラマチックな経緯で僕のところへきたので、後日、機会をみてその理由を書きます)、東宝スタジオへ行きました。少し早めの時間に着いたので、スタジオ隣にある「大工センター」で桂の板材を買いました。ぼんぼりに使用する画を版画で彫ろうと考えたのです。ところが翌二十五日は撮影本番、二十六日はテレシネ、二十七日は別のCF撮影準備、二十八日から三十一日まで撮影本番、八月一日から富山ロケとスケジュールが続くので、どこかで、時間をやりくりしなければ、ぼんぼりの制作が出来なくなってしまう。それで、昨日(二十九日)、撮影が早く終わったので、自宅に戻ってから、ぼんぼりに使用する版画の制作にとりかかったのです。しかし、いざ彫ろうと準備を始めると、彫刻刀が見当たらない。仕方なく、助手の山口君に連絡して、急遽彫刻刀を買って来てもらう羽目になってしまいました。
今年も昨年同様、画の題材は「月」に決めました。
しかし、とてもオリジナルの図案を考えている時間はありません。それで、記憶の中から一番鮮烈な「月」の形を思い出して描くことにしました。
月といえば、僕の中では宗達が描いた「月図」が一番です。確か、ベルリン美術館所蔵の「四季草花下絵和歌色紙帳」の中の一枚にあったと記憶しています。この絵は光悦の書と共に作られましたが、宗達の作品中でも傑作だと思います。後年、酒井抱一の「秋草図屏風」に描かれた銀の「月」も負けず劣らず美しいが、やはり、抱一は宗達の「月」に影響されてあの大きく風流な「月」を描いたのだから、「月」と言えば宗達です。
生憎、参考にしたい資料が自宅にないので、上弦、下弦のバランスは、まったくの記憶と僕の好みで描くことにしました。
「月」だけでは愛想がないので、「月」の下に「茅と蛍」も描き添えることにしました。これも茅や蛍の参考資料が手元にないために、以前、細川家の能衣装展で見た記憶から図案を考えました。「月」を陰刻、「茅と蛍」を陽刻にしました。
彫り終わった時には、空がうっすら明るくなり、右の掌には、軽いマメができていました。
玄人にはない、素人の軽さが持ち味だと思えば、拙い版画も鑑賞に耐えるだろうか。
ぼんぼり祭り会期中、時間ある方はぜひ、見に来てください。
昨夜、鶴岡八幡宮「ぼんぼりまつり」に行きました。
妻の作品のそばに十文字さんの作品がありました。
何故、「ぼんぼり」に十文字さんが・・・?
なぞが解けました。
先日の偲ぶ会で伺い鎌倉住民だということが。
これからもよろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願いします。