2020/08/18
グッド・バイ(5)
想像では、まっすぐ飛んだカメラは放物線の果てに力を失い、水面に向かって落下するはずだったのに、フイルムに写っていたのは立ち位置からは見えない新たな岩石と草だった。
想像では、まっすぐ飛んだカメラは放物線の果てに力を失い、水面に向かって落下するはずだったのに、フイルムに写っていたのは立ち位置からは見えない新たな岩石と草だった。
現場で竿を振る前に、自宅近くの高台で何度も練習した。目的の位置方向にカメラが飛ぶまで、またシャッタースピードをどれ位の速度に設定したらいいのか、エアーレリーズが機能する距離の限界は、万が一自分が足を滑らせた場合宙吊りになってしまうので、その対処など、考え出すとキリがない。しかし、恐怖よりもどうしても見たい気持ちが勝った。
落下する人の眼に何が見えるのか、それはいったいどう見えてるのか、確認したい気持ちが強くなり、そのうち、落下して行く自分の夢と妄想にとらわれ、どうしてもやらずにはいられなくなった。
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