2009/06/11

緒形拳さんの元気


昨日、6月10日ですが、赤坂游ギャラリーで行われた俳優緒形拳さんの追悼書画展に行ってきました。

緒形さんとは私的なお付き合いは無かったのですが、仕事のご縁で、今回の書画展の発起人の一人に加えさせていただきました。

緒形さんと初めて会ったのは、1990年、KIRIN「一番搾り」の撮影でした。キリンビールが発売する新商品「一番搾り」のイメージキャラクターに緒形さんが選ばれたのです。その頃の緒形さんといえば、映画「鬼畜」や「復讐するは我にあり」で演じた冷徹な殺人鬼のイメージが一般的だったので、クライアントのキリンとしては相当な覚悟で緒形さんに決定したと思います。僕にしても、緒形さん主演の映画はほとんど観ていたので、その人間的迫力とビールが描きたい家庭的平和世界とどこで一致するのか半信半疑でした。

最初の撮影は、新発売の告知広告だったので、スタジオの白ホリゾントをそのまま利用した真っ白な空間に、ラフな格好をした緒形さんが、うまそうにビールを飲む、ただそれだけの映像でした。

準備万端整えてカメラと一緒に待っていた僕の前に現れた緒形さんは、予想どうり、周囲の空気が一変するようなたたずまいを持っていました。表情は柔和でしたが、いわゆる眼が笑ってない、というあれです。これは長い時間の撮影にはならないから、瞬間的な判断が必要だろうと覚悟した。緒形さんの希望で、本物のビールを使って撮影することになった。「ヨーイ、スタート」の声で、カメラのフィルムが回り始め、緒形さんは缶のプルトップを引き、ゆっくりした動作でビールを飲み始めた。体に似合わないぐらいの、やけに太い指が缶を握っている。カメラのファインダーに右目を当てて凝視していた僕の眼に、唇の端から液体がこぼれ落ち、洋服の胸に点々とシミが出来ていくのが見えた。かまわず飲み続け、しばらくしてから唇を缶から離し、緒形さんはレンズを見た。その視線は男の強さ、やさしさ、かわいさをすべて持っている魅力に満ちたまなざしだった。

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2009/06/08

一眼レフカメラの動画機能

ショートショートフィルムフェスティバル
6/5日、15:30分、表参道ヒルズ地下3階のショートショートフィルムフェスティバル特設会場で、「さくら」の映像上映。

僕はひと足先に、その日の10:15分に会場へ行き、映像がどの程度のクォリティーで映写されるかをチェックした。
「さくら」は、一眼レフカメラ、キヤノン EOS 5D Mark Ⅱの動画機能を使って作った作品。多分、今までスチールカメラだけで動画作品を作った前例はあまりないだろう。それだけに質の高い映像にしたかった。撮影データだけ考えれば大画面にも充分耐えられる。しかし、フェスティバルの上映条件は「デジベ」つまりデジタルベータカムでした。HDのデータで撮影しても映写する時にNTSCの「デジベ」のデータに落として映写されたのでは何にもならない。せっかく高精細の画像が宝の持ち腐れです。フェスティバル実行委員会の都合もあるでしょうが、ここはキヤノンに頑張ってもらって、せめて高精細そのままのブルーレイ方式で上映しましょう、というのが僕の提案でした。このせめぎあいが、ここ数日間続いていたのです。今までブルーレイ映像では経験がないから無理だ、という実行委員会を説得してテストまでこぎつけた。

十文字美信
いやあ、実にきれいな画像でした。
朝一番で観た時は、我ながら感動しました。
吉野の谷底に落ちていく桜の花びらの一枚一枚が、僕の胸底に音もなく降り積もって、撮影時の胸騒ぎを再び感じていました。
もしも、一眼レフカメラを使いスチールのクオリティーで動画が撮れたら、今までの写真作品の質が変わります。
質が変わるどころか、写真映像が革命的に変化する予感があります。現代ではすっかり古くさいと思われている写真の「決定的瞬間」が、かたちを変えて息を吹き返すでしょう。決定的瞬間はドラマチックではなく、実はどこにでもあり、無数にあるのです。その分、厳密に判断されなければなりません。写真における瞬間の概念も見直されるでしょう。あるいは「しぐさ」や「型」が時代に密着した表現として再発見されると思います。面白いものが素直に面白いと言える時代が蘇る可能性を含んでいます。

だから、今回はどうしてもきれいな画像にしたかったのです。

 

2009/06/03

「さくら」

さくら-1

約3年ぶりにブログを復活させます。

同時に、僕のオフィシャルサイトを一新して、時間の許す限り更新もしてみたい、なんて考えてます。
ブログに書き込む内容は、その時々の仕事を中心とした近況報告になると思う。

さて、6月5日〜24日までショートショートフィルムフェスティバルがおこなわれます。会場は4箇所ありまして、「表参道ヒルズ」「ラフォーレミュージアム原宿」「TOHOシネマズ六本木ヒルズ」「横浜ブリリアショートショートシアター」です。それぞれの正確なスケジュールは、SHORT SHORTS FILM FESTIVAL 2009のホームページを開いてください。

このフェスティバルも今年で11年目というからそれなりの歴史があるのですね。出品作家はフィルム制作に関わってる若い作家を中心として、すでに長編も作っている監督も参加しているらしい。

さくら-4

実は、このようなフェスティバルが開催されていることを、僕は知らなかったのです。
なぜここでショートフィルムフェスティバルの話を持ち出したかというと、今回は僕の作品も上映されるからです。

普段の僕の仕事量の半分は、TVCF(テレビコマーシャル)の撮影です。動画撮影のキャリアは、そろそろ30年になります。それだけ長いキャリアですが、動画づくりはCFの撮影以外ほとんどやったことがありません。1度ぐらいは劇映画の撮影もやってみたいと思っていますが、今までチャンスがありませんでした。これも出会いですから、願っていればそのうち映画の話も来るかもしれません。

普段CFの撮影で使用するカメラは、ARI 535が多いです。たまにはビデオやデジタルのカメラを使いますが、フィルムのトーンが好きなので、主流はあくまでも35mmのフィルムです。
ところが、最近画期的な撮影機材が出現したのです。

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