白仏
路傍の白い石仏を撮り始めて10年以上になる。
伊勢神宮の宇治橋を撮影した途次、朝熊岳の金剛證寺奥之院にお詣りしたところ、横に石仏群があり、内の1体にとても心惹かれた。
大切に守られた地蔵たちから少し離れた場所だ。
時間と雨風、あるいは微生物などによるのだろうか、目鼻は摩耗して、それによりザラっとしたただの丸い石塊が黙ってそこにいらっしゃる。
仏師が心を込めて彫ったであろうお顔は、時間と環境にふさわしい形になり変わって、そのまま同じ場所に座っておられる。
陽光が落ちて、白いお顔がより一層白く輝いていた。
白仏に出会うと私はいつも「視線が合った」と思ってしまう。