「祈り」の時間

空想の宙「静寂を叩く」

今回展覧会を開催するにあたってまずメインテーマを考えました。

私は亀居山大乗寺客殿へ行くと真っ先にすることがあります。「孔雀の間」へ行き、円山応挙が描いた孔雀襖の前に座り合掌します。
撮影が出来る感謝と、その日一日撮影が無事に終わりますようにと祈念します。

大乗寺客殿は孔雀が描かれた襖の背後、次ノ間は「仏間」になっています。「仏間」の中央には慈覚大師円仁作と伝えられる「十一面観音像」が安置されています。私は孔雀の絵を見つめて目を瞑り、心の中で十一面観音を思い浮かべます。
初めは全身、頭の上の化仏、お顔と順々に想像します。
この思い浮かべる、イメージする、念ずる、言ってみれば祈ると言いますか、その時の私の心の中の「祈り」そのものを作品として伝えることは出来ないか、と考えました。
プロジェクションマッピングのような映像を使うのではなく、写真で、「祈り」そのものを共有する方法を考えたかった。
現実に存在する物質感、そして時間が伴う作品にしたかったのです。

会場へ行き、応挙が描いた孔雀の絵を静かな気持ちでご覧いただきたい。梵鐘の音が聞こえましたら、一人だけの「祈り」の時間が現れます。

梵鐘の音が「静寂を叩く」でございます。


 

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