写真と珈琲のバラード(38)
BISHIN JUMONJI GALLERY で開催する次回写真展のお知らせ。
期間:2017/12/13(水)~2018/2/28(水)
雑誌シアターガイドで連載してる「劇顔」2017年に掲載した12人の役者を十文字美信オリジナルプリントで展示します。
雑誌シアターガイドで連載を始めてから来年は20年になります。写真家にとって、ポートレートというのは撮影の基本であり、どこまで行っても魅力的なテーマだと思います。
写真を撮る、つまり撮影者と被写体との間に移り変わる一瞬を捉えて被写体の魅力を表現する。と同時に、撮影者の思想までをも定着させる。
「劇顔」の連載を始めた20年前は、役者の素顔を見つけたいと考えて臨んだのですが、すぐに止めました。変幻自在を生業とする役者に素顔は無い、と悟ったからです。そこで、楽屋まで押しかけ、舞台裏の片隅で待機し、幕が開く直前か、芝居が終わって幕が降りた直後のタイミングを狙うようにしました。
役になりきった顔と素の顔との狭間に、何が見えるか確かめたいと思ったのです。
その撮影を15年ほど続けているうちに、一つの手応えを掴みました。
ポートレートの真髄、つまり人を撮る、ということは即ちその人の特徴をいかに引き出すか、だと思って臨んではいけない、ということ。
音楽をかけたり、言葉巧みに誘導したり、考えられるさまざまな要素を駆使して、なんとかその人らしい表情や仕草を引き出そうとしてはいけない、ということに到達したのです。
「その人らしさ」の基準は何処から来てるのでしょう。その人らしいと思っている要素は何ですか?そして、「その人らしさ」は本当にその人らしいのでしょうか?
今までの概念では、撮影者が発見した新しい「その人らしさ」を撮影出来たら上質な写真だと思われてきました。20年間、役者の顔を撮影し続けて来た現在の私は、ポートレートに対する新たな感想を持っています。
一言で言うと、被写体の「らしさ」を撮ろうとしてはいけない、ということ。ましてや、撮影者が被写体の特徴を引き出そうとしてはならないのです。
それでは何をしたのですか?
何を撮ろうとしたのですか?の疑問が湧いてきますね。その答えは言葉で語るのではなく、ぜひ、写真を観ていただきたい。
是非、伺いたいと思います。
楽しみにしています‼︎
お待ちします。