沖 潤子作品展「刺青」始まる。
4/24(水)から5/6(月)まで/火曜日休み。
GALLERY Bが企画した展覧会については、僕がDM用の写真を撮らせていただくことにしています。今までには、升たかさんの陶器、瀧本さんの木彫を撮影してDMを作ってきました。今回の沖さんの刺繍作品も、撮影するのが楽しみでした。
僕は不覚にも、沖潤子さんの仕事、作品を、最近まで知りませんでした。
昨年のある時期に、ほとんど同時に(まったく同じ日に)写真家の渞忠之さんと陶芸家の升たかさんから、「凄い作品を作る人がいますよ」と教えられました。
それが聞いてみたら、鎌倉在住で、我が家からもそれほど離れていない距離にお住まいでした。
早速連絡をとって、作品を見せていただきました。
古い布地に、一針一針、丁寧に針を刺しているうちに自然にこれが現れました、というような作品です。
沖さんの作品を言葉で表現するのは難しい。
近寄って見つめると、とても繊細でありながら、全体は自由な精神で作られているようです。
針目を見つめていると、沖さんが辿った道程を僕も同じように歩いているような気持ちになってきます。かつて抱いていた想いの中にいつの間にか浸っているような、そして知らぬ間に、これから実行しようとしてる決心が胸の中に湧き起こってくるようです。
いったい、あのような作品を作り出すには、どんなきっかけがあったのでしょう。
布地に、最初の一針を入れる決断や手がかりは、何から生まれるのでしょうか。
まるで小さな小さな生き物がゆっくゆっくり進んで行った痕跡を見たようでした。
沖さんの作品を撮影するにあたって、決めていたことがありました。
なるべく正確に撮る、ということです。
その時の雰囲気や一時の気持ちで写真を作らない、ということでした。
作品を見つめていると、光は自然光で撮りたくなります。技巧を凝らしてライティングすると、沖さんの作品の大事な要素を消してしまいます。繊細で静かで、針を動かす時の沖さんの優しさを追体験するには、僕の気持ちもなるべく素直にうずくまる時間が必要です。
針を刺した痕、針を抜いた痕、糸を引いた痕、ジッと布を見つめている時間、再び針に向き合う気持ち、それらすべてを撮ってみたい。
沖さんの作品と僕の眼の間にレンズを置いて、新たに生まれた写真の中に、幾重にも折り重なって隠れている沖さんの気持ちの一つでも感じ取れたら、最高です。
「凄い作品」をぜひぜひ見にきてください。
今頃、ご感想です。
潤子さんの個展、とても良かった!
すっきり空間に針の跡がうねっておりましたね。
短篇集『ラプンツェルや、ラプンツェル』のカバーに
潤子さんの針目作品を使わせてもらいました。
(作品社のデザインがイマイチでしたけれど…)
鎌倉市在住 比留間千稲