おいしいコーヒー(19)、究極の焙煎器

究極の焙煎器

再びコーヒーの話です。

以下の文章は僕の個人的な感想ですから、誰にでも当てはまる汎用性はありません。

最近、またまた新しく焙煎器を作りました。

徐々に僕のコーヒーがおいしいと言ってくださるお客様が増えてきて、今まで使用していた焙煎器では、小さすぎるのです。一度で焙煎出来る量が400gでは少なすぎて、毎日焙煎で追われてしまいます。

で、600gを焙煎するための焙煎器を作ることにしました。まずグラム数をどうやって決定してるかというと、豆を保存するボトルの容量の関係が大きいのです。保存ボトルにちょうどいい量を焙煎しないと無駄が出てしまいます。それに、僕の場合は手で焙煎してますから一度に出来る量に限りがあります。

焙煎器を自作するとなると、多くの問題点が出てきます。例を上げますね。焙煎をやり始めた当初は、当然市販の焙煎器を買ってきて使用していました。少しずつ焙煎のなんたるかを知るにつけて、素材に疑問を感じ始めたのです。熱の伝導率と価格、成型のしやすさから考えると、素材は鉄以外に考えられません。鉄にもいろいろな種類があって、熱を伝える効率から考えると純度の高い純鉄がいいのですが、市販のものは違います。それで、製作所の技術屋さんに相談したところ、純鉄では柔らかすぎて、焙煎器には不向きだという結論になりました。結果、純鉄ほどではないが、航空機の部品に使う鉄がいいだろうということになったのです。素材を決めたのですが、次の問題は厚みです。僕が手に入れた焙煎器の厚みは0.9mmですが、もう少し厚みが欲しいと思い、1.3mmでシュミレーションしたところ、成型に不向きだ、ということになり1.2mmの厚みに決定しました。

この場でなかなか説明しにくいのですが、焙煎器内の空気の温度を想像して、僕が決めた形で作ってみたら、バランスが悪く、第一回目の焙煎からあっという間に手首に火傷しました。その焙煎器が昨年の11/23日「おいしいコーヒー(18)」に掲載した写真の焙煎器です。あの時点では自信満々だったのですが、実際に使用してみたら、思わぬ計算外の欠点が出てきたのです。

焙煎し終わった後は、すぐに豆を冷やさなければならず、その取り回しには重さと形のバランスが重要で、素早く取り扱うために何が大切か、改めて認識させられました。

使っているガスは都市ガスです。熱源はガス以外には考えられません。炭火焙煎などもあるようですが、僕のように微妙に温度を調節するには炭火では無理です。

都市ガスのホースの径が家庭で使うのは通常9mmが多いのですが、火力を考えて径13mmに工事し直しました。熱源の位置から焙煎器までの距離が微妙です。テストを繰り返して焙煎器を支える台の高さを決めました。それに、焙煎しながら焙煎の進行具合を確認するために度々豆の色形を確認しなければなりません。そのためにベアリングを装備して回転しやすくしました。ガスコンロの形も重要です。僕の厨房に合うさまざまな要素からマルゼンのガスコンロにしました。

そんなことをあれこれ考えながら、失敗を繰り返し、やっと現時点での究極の焙煎器が完成しました。鎌倉近辺に来られた方は、ぜひ、この焙煎器で焙煎したコーヒーを試してください。

僕のわがままな注文を何度も何度も聞いてくれ、そして完璧に作り上げてくれたトライトライの小島君、みゆきちゃん、ありがとう。改めてお礼を言わせてください。

 

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