時間が足りない。
このところ、時間が足りない生活がずっと続いている。
来年1/1日からGALLERY Bで始まる自身の新作写真展のために、暗室に入っていました。
現在制作中の作品のタイトルは「FACES lll」と「神殿」です。内容については、言葉で説明するよりも、ぜひ写真をご覧いただきたい。被写体は「石」と「花」です。今回も、僕が写真家になってからずっと追いかけている「見えないものの視覚化」のひとつです。
ずっと暗室に閉じこもって何をしているかというと、もちろん写真をプリントしてるのですが、黒の色味について、テストを繰り返していました。最近はデジタルの隆盛で、フィルムのためのさまざまな資材が無くなりつつあります。フィルムだけでなく、印画紙もそうですし、現像液も種類が少なくなってきました。手に入る市販の紙や液では、自分が思うモノクロ写真の黒にならないのです。それで、昨年あたりから現像液の単薬品を買ってきて、自分で調合を始めました。幸いに、処方箋はすぐに調べられました。
黒という色は、本当に奥が深い。まず、どの濃度から黒に見えるのかは個人差があるし、階調も無限です。今回の作品の性格から考えると、黒は真っ黒になりたい。ただの黒ではなく、真っ黒です。印画紙と現像液との相性があるので、そのあたりをいろいろテストしなければならず、それで、ただただ実験の時間が必要でした。
どうしてそれほど真っ黒にこだわるかというと、今回の作品「FACES lll」の被写体は石なのです。
それもただの石ではなく、今から約700年前に、人が顔にこだわって作ったものです。それが、700年という時間と風雪によって、顔が消えてしまいました。その消えてしまった顔を、僕の目と光とカメラとレンズとフィルムと現像液と印画紙の力によって、見えるようにしたいのです。
黒が真っ黒でなければ、見えない顔が立上がってこないのです。そして、新しく見えてきた顔は、きれいな顔であってほしいから、同じ黒でも微妙な色味にこだわっているのです。
先月末に、やっと満足いく黒が出ました。
現像液からゆっくりと映像が浮き上がってくる感じは、なんともいえません。写真家であってよかった、と思う瞬間です。展示まで限られた時間しかなかったので、間に合うかどうか懸念していましたが、なんとか完成させることができそうです。毎日毎日、プリントとにらめっこです。
もう一つの「神殿」は、昨年から撮り始めましたが、やはり見えないものを撮っています。
「花」は、人間が理解できない何か別の超能力の現象によって、生まれたものとしか思えません。それほど美しさが微妙で、あまりに繊細なために見逃しているところがたくさんあると気付きました。この「神殿」と名付けた作品も、完成するまでには、きっと何年もかかると思います。今回の発表は、その第1回目だと思います。
詳細についてはまた別の機会に書きたいと思います。
2012年1月1日から始まる「十文字美信作品展」にぜひ来てください。
先生、ご無沙汰いたしております。
作品展、時間を見つけて必ず伺いたいです。
いつまでなさってますか?
楽しみにいたしております。
こちらこそなかなかお会いできませんで、ご無礼しております。次回の私の作品展は、新年1/1日〜1/31日まで開催するつもりです。もし、お時間の都合つくならご覧いただきたいです。事前に連絡いただけると嬉しいですね。「FACES lll」は、顔にこだわったシリーズの最後になると思います。「神殿」はこれからの展開の始まりです。私もだんだん歳をとってきて、1作1作が、これが最後になるかもしれないとの想いが浮かんできます。後悔しないように全力で撮影しています。
「FACESⅢ」ですね。「石」と「花」見えないものを私たちが、どのように感じ取れることが出来るのか、むずかしい課題に、これから先ますます楽しみです。「時間が足りない」と言われますのも、ごもっともですネ。コーヒー豆ひと粒一粒に愛情をそそぐ、そんななかでしょうけど、ジャック・ルーシェと朝のコーヒータイム、このひと時を、これからはお母様もお仲間入りのことでしょう。バッハは向かいの教会にて聞かせてもらっています。パイプオルガンですのでプレイバッハ(ピアノ・ジャズ)とは違いますが、どちらも好きです。「まいるす・でべそ」について、あまりご執心でなかったと知り残念に思います。今日はとても寒いです。雪も降りました。季節がらお体には、十分お気をつけください。
コメントありがとうございます。足柄の茶葉はいかがでしたか?ヤモリはこの寒さでどうしているのでしょう。今年はいつになったら寒くなるのか、と思っているうちに冬らしくなりましたね。時間ありましたら1月の作品展を見てください。