「FACES」写真の暗室作業
このところずっと暗室に入りっぱなし。
展覧会「FACES II」のためのプリント作業です。
2年前に鎌倉のギャラリーに暗室を作って、いつでもプリント作業が出来るよう準備をしていたのですが、今まで世田谷の暗室を使っていたため使用する機会がありませんでした。今回が鎌倉の暗室を使った初めてのプリント作業です。引っ越しのための荷物に囲まれながらの作業になりました。
何年やってもプリントは難しい。焼き直せば焼き直すほどプリントの程度は良くなります。だから、どこかのタイミングであきらめないといつまでも終わらない。暗室に入ると、何時間でも出て来ないと言われる理由はそこにあります。気に入るまで、とことん追求したいのですが、今回はそうもいかないのです。
しかし、写真関係メーカーのアナログ写真に対する扱いの冷淡さは、とどまるところを知らない状態です。
コダックがカラー用印画紙の製造中止を発表しましたが、これは痛いです。
予告ではなく、市場に品物が無くなってから、製造中止を発表するわけですから、困ってる写真家はたくさんいるのではないでしょうか。僕もその一人です。
今回の作品「FACES」は、ネガカラーフィルムで撮影してますから、プリントは必須です。
幸いにも、大全紙サイズ100枚分のペーパーをストックしていたので、今回だけは間に合いそうです。
次回の作品展になると難しい。
ネガカラープリントを実際に体験した方ならおわかりでしょうが、ネガカラーフィルムの粒子は大変細かいのです。ですから、還暦をとうに過ぎた僕の老眼では、ピントが合わせられません。したがって、ピント合わせは助手の山口君の仕事です。最近はピント合わせだけでなく、ほとんどが彼の作業です。すっかりまかせても安心できるくらい技術が向上しました。嬉しいです。
「FACES」の写真は、今まで見たこともないポートレートです。
顔の写真というと、大抵は表情を問題にします。僕が今回取り組んだのは、一瞬の表情とは違う顔の魅力を探してみたかったのです。むしろ表情を支えているモノ、「その人らしさ」の追求だと解釈しています。そのために新しい撮影道具を考えました。僕が感じる「その人らしさ」は既成のカメラでは写らないです。技術的には語るほどのことはありませんが、写った顔は凄い魅力的です。
暗室作業を終えて、この写真が表現している世界をあらためて思い直しています。
ぜひ多くの方に見てほしいですね。