「FACES」の写真、暗闇の中から浮かび上がる
八月十日、本来なら湘南の久留和海岸でCF撮影の予定が、降雨のため十二日に延期。
翌十一日は同じクライアントでスチールの撮影。
もう気心が知れてるスタッフなので、撮影は約九十分で終了。それでも僕にしては時間がかかったほうです。
デジタルカメラで撮影したので、その場ですぐにセレクトする。
十二日は夜間撮影だが、午前中に撮影現場に入る。
九日に、台風の影響で高波が押し寄せ、海岸の砂浜に作った坂道が決壊。そのために若干ロケセットの位置を変更せざるを得なくなり、夕方まではセットの中のさまざまな小物の位置修正。
七時に撮影開始。空の青味が残るバランスは時間にしてわずか十分。あとは、前後のカットのつながりを考えながらライティングで修正。すべての撮影が終了したのは夜の十時半頃でした。
十三日は前日撮影した作品のテレシネ。テレシネとは、フィルムで撮影した映像を電気信号に落とす作業。この時にカラリストと一緒にモニターを見ながら色味を作っていくのです。夜は十九日から始まる別のロケの打ち合わせ。
そんなわけで、十四日からやっと「FACES」展のプリント作業を始めることが出来たのです。
新作の「FACES」の作品はすべてカラーです。
最近は視力が衰えてきて、特に、ネガカラーフィルムの粒子が細かくて見えません。
僕の代わりに、助手の山口君が引き伸ばしのピントを合わせてくれる。本当に文字どうり、眼となり、手となり、足となりです。
会場である「ギャラリーショウ」の空間の大きさを考えて、作品は大全紙サイズ五点、全紙サイズ三点に絞りました。そして、モノクロ写真の「首なし」も大全紙サイズで五点プリントしました。
前回のブログでも書いたように、今回の作品「FACES」は、「首なし」で見失った顔を探すことから始まったので、作品「首なし」も一緒に展示したいのです。これを機会に、ぜひオリジナルプリントで見てください。印刷とは違う世界が感じられるはずです。
上記以外にも、同時期に開催される「東京フォトフェスティバル」に出品する作品「殺しの場面」も大全紙サイズで六点プリントしました。
三日間は完全に暗室に籠りました。
もともと僕はプリント作業が大好きなので、一度暗室に入ると、納得いくまでは、なかなか外に出ません。
今回は特別愛着ある作品なので、普段とは一段と気持ちが違います。
プリントの考え方、出来、不出来が、作品全体のレベルを左右します。
モノクロの場合でしたら、黒の色味が問題です。しかし、現在は印画紙が思うように手に入りません。そういう環境の中で、自分の作品にとってベストのプリントを探っていくのは根気が必要です。
紙と現像液の相性を見つけ出すのです。
先ほど、十八日の夕方、ギャラリーの佐竹さんに仕上がった写真を渡しました。
僕の手元から離れた作品は、これから一人歩きしていくのです。
5日がさらに楽しみになってきました。
と同時に緊張してきました。
待ち遠しいです。