「マカロニサラダ/雑誌anan/1971年」
1971年、雑誌『anan』編集者椎根典子さんから撮影の依頼があった。衣装は堀切ミロさん、モデルは山口小夜子さんだった。
小夜子さんと初めて会ったのは堀切ミロさんの事務所だったと思う。小夜子さんが21~22歳だったろう。典子さんから「とても雰囲気ある女性だよ」と聞いていた。
私がミロさんの事務所へ行くと小夜子さんはすでに部屋の隅で座っていた。静かな、というよりは寂しそうに見えた。会話も少なかったが、佇まいの奥に意思の強さを感じた。セーラー服のような衣装を着ていたせいか、年齢よりも若く見えた。
撮影場所は福島県郡山の農家に決めた。
原色の野菜や果物の絵を大胆に描いたミロさんのワンピースは、日本の農家にはしっくり合わないだろうと思ったからだ。
小夜子さんの静かな佇まい、ミロさんの現代的な衣装、日本の農家、この3要素がスパークして生まれる違和感に巻き込まれてみたかった。
予想していたが、撮影はなかなか苦労した。
そう簡単には新しいファッション写真の世界に到達出来なかった。葛藤と模索の中でもなんとか撮影が終了したのは、小夜子さんの才能がすべての違和感を上まわったからだろう。
小雨に濡れそぼりながら、表現者として踊るように動く山口小夜子に助けられた。
M→山口小夜子、衣装→堀切ミロ、編集→椎根典子