「水中ヌード/週刊プレイボーイ/1972年」
写真家としてデビュー当時、ヌード撮影は私の悩みの一つだった。
モデルがセクシーなポーズをとればとるほどシラけてくる。仕事の上でモデルが拵えた表情をセクシーに感じるほど素直な性格ではなかった。
自身とモデルの個人的な関係を撮るのではスケールが小さくてつまらないし、なんにせようわべだけのセクシーさでは我慢出来ないとしたら、どうすればいい?
やはり、ことここに至って真剣必死にならざるを得ない状況を作り出し、その環境でのヌード撮影を考えた。重力が浮力を上回り、加えて息が出来ない苦しさから生まれる予測不可能なドラマを期待して、水中で撮影することを思いついた。
周知の撮る撮られるの関係から、一瞬でもいい、虚構の破れ目を作り出したかった。
全裸になったモデルを自転車に乗せ、真紅の布を沈めたプールに入ってもらった。群がる若い男たちは以前私が働いていた六本木スタジオのスタジオマンに頼んだ。
編集者→小田豊二