写真と珈琲のバラード(35)
久しぶりに珈琲の話。
私は昔ながらの手回し焙煎器を使っています。1kgという、手回しにしては大きな容量で焙煎出来るよう内部を工夫して作りました。8年前の初号から数えると現在6号器になります。これ以上大きな焙煎器を作ろうとすると、重量が重くなり過ぎて取り回しが出来ません。現在使っているのが、最終型かなと思っています。
さて、前回冷却についての話をしましたが、今回は冷却に関連した笊(ざる)の話です。
焙煎が終了した珈琲豆は冷やさなければなりません。それと同時に、焼けた豆から生じる煙と豆に付いてる「チャフ」と呼ばれている薄皮を破棄する作業が必要です。煙を逃し「チャフ」を捨てるには笊が最も適しています。ところが、一口に笊といっても用途に応じて形や大きさは千差万別。焙煎を始めた8年前、私は全くの未経験でしたから、笊の知識もありませんでした。
焙煎が終わった豆は、ものすごい熱を帯びています。直ちに笊にあけて豆がムラなく回転するよう前後に振るわけです。ちょうど農家の庭先で稲の籾殻を振り落としているあの感じです。ということは、回転しやすいような深さのある形が求められますね。大きさは焙煎した量に比例します。簡単な作業に思えるでしょうが、やってみると結構難しい。使いやすさは笊にもよるのです。
初めは何もわからず、浅草合羽橋で適当に買ったものを使っていたのですが、どうも気に入らない。そのうち、鎌倉材木座にある光明寺の「お十夜」縁日に行った折に見つけた笊を使っていました。ところが数年も使っていると、珈琲の油脂とチャフがくっついてなんとも見苦しい。裏底もねとねとしてきました。原因は、笊の強度と形を保つために張ってある針金の方向によることがわかりました。この笊を作っていたのは、埼玉在住で80代、その道一筋と話していたお爺ちゃんでしたから、きっと、油脂の出ない、蕎麦用の笊だったんでしょうね。わたしの無知のせいですね。それでふたたび合羽橋へ行き、いくつかの笊の中からこれといったものを選び、生産者を聞き出しました。
話が長くなりましたが、現在私が使っている笊は佐渡島の西南、小木というところで作っている笊なのです。
強度、形、重量など、私にとってはとても使いやすい笊です。また今年も撮影がてら、笊を買いに佐渡へ行く予定です。
掲載した笊は左から順に、焙煎終了した豆を振るため、冷やすため、乾燥するための笊です。
乾燥用笊は3つあり、これ以外にハンドピックする時に使う生豆専用の笊がありますから、計6つの笊を使い分けています。