写真と珈琲のバラード(5)
美味しい珈琲とはどんな珈琲なのか?
人それぞれ好みがありますから、まずは自分の好きな珈琲を探してその特徴を見つけることから始めました。初めは売っている豆を数種類買って来て抽出してみましたが、全く気にいりません。何処のカフェで飲んでも変わらない、個性のない、はっきり言うとつまらない珈琲でした。次に都内の有名珈琲店に行き、何が美味しいのか、その差を確かめることにしました。「ランブル」「バッハ」「大坊」等々それぞれ個性があり、なるほど人気があるのも頷けました。そのうちに自分の好みも解ってきて、実現すべき「十文字珈琲」の課題を5項目に分けて決めました。
①香り→出来るなら花の香り
②口当たり→出来るなら優しく柔らかな口当たり
③味→出来るなら甘味を大事にした何処にもない品格ある味
④喉ごし→出来るならスッと滑らかで、飲み込むと抵抗なく落ちていく喉ごし
⑤残り香→出来るなら最後に甘さだけが残り、グラテーションで優しく消えていく残り香
この5項目を実現させたい。
理想とする私の「十文字珈琲」を実現させるためにはどうすればいいのか、を考えました。初めは抽出の仕方が大事なことかと思いましたが、すぐになんといっても焙煎次第、珈琲は焙煎によってどのようにでもなる、と知りました。機械焙煎は最初から外しました。機械が焙煎するのでは誰がやっても大差ない。そこで、表参道の「大坊珈琲」を参考に手回しのドラム型焙煎器でやってみようと思ったのです。私は珈琲の焙煎は全くの素人ですから、初めは珈琲と火の関係を詳細に知りたいと思い、間接式焙煎器ではなく、直火式の焙煎器で経験を積もうと考えました。第一歩は、浅草UNION COFFEEで、手回しの焙煎器を買って来ました。ドラムに穴が空いていて、火、熱風が直接、内の珈琲豆に当たるタイプです。この方が結果は解りやすく直接的なのです。直火式を約3年やりました。掴んだことは、焙煎というのは何をどう考えようと結局は豆を焼くこと、しかし、どんなことがあっても炭化させてはいけないことです。直火式焙煎器で養った経験は現在でも役に立っています。珈琲豆というのは、最新の注意を払わないと焦げてしまいます。専門家の間でも案外知られていないと思いますが、珈琲豆は外側よりも内側が焦げやすいのです。ですから焙煎が終わったら、必ず豆を割ってつぶさに観察する必要があります。理想は表面と内側の色彩が限りなく近づくことです。初めの3年間は焙煎、観察を飽きもせず繰り返していました。続きはまた次回に。
珈琲というのは、焙煎次第でいかようにもなるのです。
今朝の珈琲はケニアにしました。カップは1880年代、イギリスのコールポート製です。