「スナップショット/1970〜71年」
ギャラリー展示作品の内
「スナップショット/1970~71年」
写真家になると決めた頃からスナップショットを撮り始めた。
独立することになったのは計画的ではなく、突然そうなったので、心も含め準備と言えるものは何もしてなかった。
生活の方法を考えるよりも先にやらなければならないことは、写真は一生かけて探求すべき価値あるものか自分なりに確かめたかった。
この頃は写真で何をしたいのかはっきりわからなかった。ただ、初めから報道写真の真実性を信じていなかったので、報道の道へ進む選択肢は捨てていた。
伝えたい主題が無い時、写真で何を表現するのか。
他の人と私を区別するものは何なのか、写真を撮ることで少しでも明確になればいいと思った。
撮影場所は住んでいる自宅周辺から始まり、東京の下町、信州、北陸、東北、四国まで足を伸ばした。
地球や世の中を構成する秩序に思いを馳せることなどとても無理だった。結果的にその土地が持つ匂いや人の佇まいなど、明確に言葉で言い切れないものを主に撮った。あるのかないのか、そのうちに失われてしまうだろうなと予感するものに惹かれていた。シャッターを切る度に、場面が記憶の断片とどこかで繋がっているのに気づいていた。
個人的であり、些細なものごとこそ写真にふさわしい被写体だと思うようになった。
この時代に撮ったネガフィルムは自宅や事務所を転々とする間にあらかた紛失してしまい、今回展示したのは手元に残っているフイルムから選んでプリントした。