写真と珈琲のバラード(41)
BISHIN JUMONJI GALLERY
次回展示のお知らせ
タイトル:「修羅」失われた記憶
会期:2018/5/23(水)~6/25(月)
ご挨拶
今年に入ってから京都、佐賀、熊本、再び佐賀、福岡、兵庫、姫路、酒田、山形と移動して、さらに兵庫、京都、大阪、5月は北海道の羅臼へ行く予定です。具体的に何を撮る、という目的もなく、気が向いたらその場所へ行ってみる、そんな旅です。
気が向いたら、と書きましたが、何に対して気が向くのかと言いますと、なんでしょうか、自分でも何故その場所へ行きたくなるのかはっきりした理由はわかりません。何処へ行ったところで、明確な被写体が私を待っているわけではないのです。
昨年からなんとなく思うことがあり、その、なんとなくを確かめている気がします。
昨年の7月に旧友の藤崎を亡くしました。
お互い10代の頃に知り合い、しばらくの間は毎日、密に会っていました。私にとってどんな友人だったか、詳細は写真集『感性のバケモノになりたい』の「藤崎」に書いたので繰り返しませんが、彼を亡くしたことで、記憶について考える機会が多くなったのです。
彼を亡くした当初は、哀しみと懐かしさの混ざった言葉にしにくい感情が浮かんでは漂い、そのうちに消えていくを繰り返していました。
しばらくすると記憶の出どころや内側を覗いてみたくなりました。10代の頃に何をやったか、の行動を思い出すよりも、当時のワクワクした興奮そのものを蘇らせてみたい、と思ったのです。
古希を過ぎた私が、10代の頃の記憶を手繰り寄せたところで、手応えになるものは何も残っていないのでしょう。記憶を追っているうちに、藤崎をきっかけにして新しい記憶を産み出していることに気がつきました。亡くなった藤崎を心に抱きながら、生まれ出た新たな記憶の地平を歩いてみたくなったのです。出来ることなら言葉ではなく、写真映像で生まれた記憶に近づき、離れ、走り、共に倒れてみたいと思ったのがこの作品を撮り始めたきっかけです。
ぜひご覧いただきたいと思います。