「平家納経」と「もみじ饅頭」

11/19日、羽田空港から広島へ飛ぶ。
TVCFと広告スチール撮影のために、宮島でロケハン。
当然ながら、宮島といえば「厳島神社」です。

1980年頃から10数年間、僕は日本の伝統文化にどっぷり浸っていました。『アートジャパネスク』『FRONT』『なごみ』『桂離宮』そして『黄金風天人』などで、全国の寺社、仏閣、美術館を訪ねては撮影をお願いしていました。


その時期は見るもの、聞くもの、食べるもの、飲むもの、触るもの、何もかもが新しい発見で、かつての日本人が考えてきたこと、作ってきたことの意味を知るたびに、自分の今までの無関心さにショックを受けていました。当時は、日本の伝統的な美意識なら、なんでも吸収してやろうと思っていました。立体映像撮影に凝っていたのもこの時期で、伝統的な美意識を知識だけでなく、実際に体験したいと願って立体写真に行き着きました。立体写真についての話は、また次の機会に話しましょう。

数ある美術品の中でも、撮ってみたくてウズウズしていた一つが「平家納経」でした。

「平家納経」は、1164年に平清盛が一門の繁栄を祈願して「厳島神社」に奉納した装飾経です。
この経品は「法華経」28品の他に、「観普賢経」「阿弥陀経」「般若心経」など33巻を1具として、他に類をみない華麗な装飾経なのです。見返しに描かれた図絵は見事なもので、中国の影響を脱し、日本独自に発展した平安時代を代表する絵画といえます。


日本の美術を歴史的に俯瞰すると、いつの時代にも黄金を使用した美術品の存在に気がつきます。そして、日本の黄金美術に、僕は、ある特徴を感じていました。かつての日本人は、黄金に財宝的な価値を見いだすよりも、もっと重要な発見をしていたのではないかと思ったのです。それは、黄金から発する黄金光線です。黄金の照り返しに最も崇高な価値を与え、金色の輝きこそが精神的な救いと安らぎの源泉だったのではないかと考えたのです。そうであれば金ムクである必要がなく、内部が銅製で表面のみ金色に輝く金銅仏の像で充分事足りたのではないでしょうか。水銀と金を混ぜたものを銅製像の表面に塗布し、熱を加えて水銀を蒸発させ、結果、金色の仏像にする。当たり前のことかもしれませんが、金銅仏を消極的な金メッキと考えると、この時代の人々の思想をとらえることが出来ないのです。経済効率優先の現代の考え方では、どうしても納得できませんでした。そうした感想を元に、1990年10月に、写真集『黄金風天人』を上梓しました。

末法思想が蔓延し、盛んに阿弥陀信仰が流行した平安時代は、その救いの黄金光線が顕著に表面化した時代です。人々が極楽往生を願った金色のひかりの意味と価値をわかりやすく解説した図絵が、「平家納経」の表紙見返しに描かれていると思いました。ですから、写真集『黄金風天人』に掲載する美術品の中に、「平家納経」を何としても入れたかったのです。
何回か撮影許可を提出しましたが、とても歯が立ちませんでした。第1級の国宝ですから、個人で撮影するのはなかなか難しい。結局はあきらめざるを得ませんでした。しかし、今でも機会があったら撮影したいですね。

実は、メチャクチャにマエフリが長くなってしまいましたが、今回のブログで書きたかったのは、「平家納経」のことではないのです。


以前、宮島へ来た時も名物の「もみじ饅頭」を食べましたが、感心しませんでした。浅草の人形焼きの方がまだしも旨いと思ったくらいです。俗に「名物に旨いものなし」とよく言われますが、まあ、そんな感想でした。ところがです、今回食べた「もみじ饅頭」は、すこぶるおいしかった。買ったお店は「菓子処きむら」(0829440041)です。もともとはケーキ屋さんだったらしく、お店の看板には「ケーキ屋のきむら」と書いてありました。「菓子処きむら」には、「もみじ饅頭」といっても中味に種類があり(粒あん、オリジナルチーズ、アップル、クリームチョコ)、その中でも僕が感心したのはチーズ味です。話を聞いただけでは、現代的な味を想像するかもしれませんが、ある種のなつかしさがある旨さなのです。

ある種とはどんな種?と思われるかもしれませんが、これは個人的な感想なので、それ以上何とも言えません。子供の頃に食べて記憶してる旨いものに共通した感じ、としか言えないですね。菓子に付いてきた店の「ごあいさつ」文によると、「オリジナルチーズはデンマークのクリームチーズをベースにプロセスチーズとブレンドしたもの」とありました。多分、時間がたってもある程度固くならないように工夫したのでしょう。
28日から本番の撮影で再度宮島を訪ねるので、きっとまた食べたくなるでしょうね。
 

 

 

6 Responses to “「平家納経」と「もみじ饅頭」”

  • kanon kimura |

    拝啓 
     
     十文字美信さま。

     おはようございます。
     先日よりお世話になっております。
     宮島の娘です。(笑)”きむち”といった方がお分かり戴けるかと…。
     ブログでの当店の記事のUP、ありがとうございます。
     アナログな家族にはプリントアウトして渡そうと思っております。きっと喜びます。
     
     さて、私は明日から撮影部隊に合流させていただきます。
     皆さんのお邪魔と気にならないよう、鹿の如くコソっと動きます。

     どうぞよろしくお願い致します。
     
     余談ですが…
     是非またもみじ饅頭も召し上がってください。タイミングが合いましたら焼きたてのものをお口にしていただけるかと。
     温かいチーズと冷めたチーズ…また違った味わいをお楽しみいただけると思います。ちなみに私はチーズとアップルは冷めた方が好きなんですが。
     チーズ好きには温かい支持率が高いようです。

    KANON.H.C  木村花音

    • Bishin |

      おかげさまで撮影も無事終了しました。
      久しぶりの宮島でしたが、気持ちいいカフェも見つけたし、また、楽しいことが増えましたね。ありがとう。
      つぎは、キムチの出産だね。報告してくださいよ。

  • kanon kimura |

    こちらこそお世話になりました。寒い中お疲れ様でした。
     私も今月から産休予定なので出産前に宮島に戻り、壱都岐二号店へ行ってみます♪
     また、ご報告いたします(^^)
     十文字さんも、お体に気をつけられて、良い年末年始をお過ごし下さい。

    KANON.H.C  木村花音

  • 木村花音 |

    十文字様

    ご無沙汰しております。宮島のキムチです。(笑)

    お変わりありませんか?

    一度オフィスのアドレスにご連絡したのですが、その後、大坪さんから「十文字さんは今ハワイじゃないかな?」と言われ…。

    もしかしたらメール…届いてないも??と、今回しつこく連絡してみた次第です。(笑) 

    2010.1.2 に無事女児を出産いたしました。
    「詩」です。今は9ヶ月を過ぎ、たくましく育っています。
    時々実家にも帰ってます。そろそろ紅葉の季節です。。。今年はどんな彩りかな〜?

    以上。ご報告まで(^_^)/

    またお会いできる日…いつかを楽しみにしています☆
    朝晩冷え込みますので、お身体ご慈愛下さい。

    • Bishin |

      久しぶりです。元気そうな便りで嬉しいです。
      出産からもう9ヶ月ですか、あっという間ですね。たくましく成長されてるとのこと、安心しました。
      今年の紅葉はどうですかね。
      猛暑が影響してると思います。これで気温が下がるといいのでしょうが、あいかわらず暖かい日々が続いてます。
      紅葉饅頭食べたいね。
      ご両親はお元気でしょうか?
      そろそろ撮影したい気持ちが充実してきてるので、旅に出ようかと考えています。
      また宮島へ行く時は必ず連絡します。

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