「升たか 作陶展」始まる。

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昨日、「升たか 作陶展」に出品する作品を拝見しました。

今回展示する作品は、昨年と大きく違って、オブジェが8点あります。
人物像が6点、昆虫らしき像1点、あとの1点は何と言ったらいいか、顔でもなく、形を表現したものでもなく、「手が動いているうちにこうなった」とでも言ったらいいのでしょうか、思わず立ち止まってしみじみ見たくなる「もの」です。
すべてが繊細な色使いで出来上がっていますが、印象は強烈です。
升さんの心の内側を覗くような、作陶家のプライバシーに触れるような気がしました。

僕がここで何か言葉を使って説明すると、升さんから「いや、違うんだなあ」と言われそうなので、解説は止めておきます。
どちらにしても、あまりお目にかかれない、不思議な作品です。
なかなか興味深いものですよ。ぜひ見に来てください。

オブジェ以外に、器、皿など、日常の愛用品としての作品ももちろんあります。

升さんといえば、絵付けの素晴らしさは天下一品、現代の陶芸家では屈指のセンス、技術を持っていると思います。僕が枡さんの絵付けに惹かれる理由は、他の人には真似出来ない繊細な筆使いが大きいのですが、実はそれ以上に興味を持っているのは、完成させないところです。言い方は難しいのですが、制作の途中で、作品の行く末が見えてきた時点で、それを壊そうとする意思が働くところです。本人から聞いたわけではありませんから、正しい感想かどうかわかりませんが、出来上がった作品からは、完成を拒否する意思を感じます。

作家としては全く困った性格ですが、僕個人としては、このまま行って欲しいのです。

繊細な作風ですから、大胆不敵な作陶なんて矛盾してる言い方ですが、ますます独自の世界に埋没してください。
升さんが器物に描く人物は、すでに愛らしさが備わっています。好ましい人物として存在しています。その描いた愛らしい人物に、升さんの困った性格が重なって、器物としての複雑な魅力が現れていくのでしょう。

ここまできてもまだ完成途上だなんて思わせる作家は最高ですね。

たくさんの方に見ていただきたい。

 

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