神様の保証

昨日(4/17)、表参道にある「大坊」珈琲店主の大坊さんが、我が「CAFE bee」に来訪された。
奥様もご一緒でした。
「大坊」珈琲店は、村上春樹さんもエッセイ「夢のサーフシティー」の文中で絶賛されている珈琲の名店です。
僕は個人的に大坊さんと知り合いというわけではなく、陶芸家の升たかさんから僕の話を聞いて興味を持たれ、来店されたのだと思う。直接的には知り合いではないのですが、一方的に僕の方は大坊さんを存じ上げている。

一昨年の11月に、自分で珈琲を焙煎しようと思い立ってからまず始めたことは、珈琲の名店といわれている店の珈琲を飲みまくったことです。仕事で地方へ行くと、その地の名店を訪ねたりもしました。そして、自分なりにおいしいコーヒーの共通点を探し出し、その味を実現させるにはどうしたらいいかを考えたのです。


その中でも、「大坊」のコーヒーは、僕を魅了しました。口あたりのやわらかさ、香りの良さは他店を圧倒していました。それで時間がある時など、ただの一人の客として大坊さんのコーヒーを飲みに行きました。6〜7回は行ってると思います。
大坊さんが焙煎してる現場にも出会ったことがあり、ロースターを回している手を見ているうちに火加減の考え方を知りました。
大坊さんはとても親切な方で、僕のことは何者かまったく知らないにも関わらず、基礎的な質問に丁寧に答えていただき、彼のアドバイスによって自分のコーヒーの基準の幾つかを定めました。その折に大坊さんが「おいしい珈琲のファンが増えるのは喜ばしい」といった意味の言葉を呟かれたのが印象的でした。

4/17日は日曜日で、鎌倉も人出が多かった。午後は「CAFE bee」も客でごったがえしていました。
朝はコスタリカ、コロンビアの2種を焙煎し、昼過ぎから、厨房に立って僕自身がコーヒーをいれていました。ふと、顔を上げて振り返ると、大坊さんが立っておられたのです。
驚いたのと、嬉しい気持ちとが混ざり合って、「いやあ、驚いたです、本当ですか、うれしいなあ」など、ちょっと意味不明な言葉を発したのではないかと思います。
突然だったので、どんな顔つきをしたのか、心配になるくらいです。
大坊さんも「えっ、あんたなの?」といった表情で、僕を見つめていらした。


ブレンドとモカの2種を注文されました。
何しろ、満席状態だったので、湯温も完璧に確かめる時間がなく、いつものペースでいれました。
大坊さんを観察してる暇がなく、飲んだ後の表情は見ることができません。
奥様とカップを交換して、味を確かめているようでした。
すぐに、コロンビアを追加注文されました。

15分ぐらい滞在されたでしょうか、客が外で空席を待ってるような状態だったので、気を使われて「また来ます」といって立たれました。
「もうちょっといられませんか?」と声をかけたら「混んでるので、また来ます」と答えられた。

出口まで送っていくと、突然、「コーヒー、おいしかったです」と言われた。「本当ですか、いやあ嬉しいです」と感激してると、再び「ほんと、おいしかった」と僕の顔を見上げました。
大坊さんにおいしいコーヒーなんて言われるのは、神様に保証されたようなもんです。
情熱を傾けて、焙煎し続けてきた甲斐がありました。

「ここはあなたの自宅ですか?」「すごい百日紅の樹ですね」と言われ、「またゆっくり来ます」と言い残して帰られました。
大坊さん、ぜひまた来てください。僕もまた「大坊」に行かせてもらいます。
おいしいコーヒーに対する思いもいろいろあるので、お話したいですね。
お待ちしています。

 

 

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