写真と珈琲のバラード(6)

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美味しい珈琲を作り出すには焙煎をどうするか、です。新鮮な豆を使えば新鮮な香り、味がしますが、必ずしも美味しさには繋がりません。オールドクロップといって、わざと数年間寝かせてから使う人もいます。私もそれほど豆の新鮮さにはこだわりません。あまりにもフレッシュな香りは豆臭くて嫌です。

何が嫌いかと言うと、焙煎が浅く、酸味が強い珈琲です。豆の新鮮さを活かした「サードウェーブ」などと称して現代の若者たちの間で流行ですね。新しく出来たカフェのほとんどはこのレベルです。私は嫌いですね。珈琲は基本的に甘くなければ美味しくない。焙煎が進行するにつれて、酸味、甘味、苦味の順に現れます。豆の種類によって違いますから単純には言えませんが、酸味から苦味に移るわずかな隙間に甘味が隠れています。苦味というのは焦げに移るまでの間ですから、美味しい苦味の段階もまた見極めが難しい。深く研究しないでも焦がさずに無難に仕上げ、それなりにカタチになるから酸味の段階で終了するのです。本当に美味しい酸味は最も難しい。美味しい、という時の表現に「醍醐味」と言いますが、醍醐というのは乳酸を含んだ意味があります。最もハイレベルな味覚は酸味かもしれませんが、ホッと一息つく時にそれほど高度な酸味など必要ありません。私が自家焙煎してる若い人に言いたいのは、勇気を持って深い世界まで行ってごらんなさい、です。流行に左右されず、本当に自分が好きな珈琲を追求しないとやる意味がない。珈琲はホッと一息つく時間の贅沢な瞬間に必要なアイテムですから、甘さがなければ役に立ちません。珈琲の甘味は砂糖の甘味と違って微妙な分だけ様々な香りを含んでいます。甘い珈琲を実現させることがいかに難しいか、やってごらんなさいよ。

先日撮影した19世紀カップの写真を集めてアルバムを作りました。冒頭にアップしたのがそのアルバムです。私はアンティークカップの専門家ではないので、写真に記述した情報が不正確かもしれません。鎌倉「Cafe bee」に来られた方はぜひこのアルバムを見ながら、19世紀カップで「十文字珈琲」のひと時を楽しんでください。


2 Responses to “写真と珈琲のバラード(6)”

  • 小谷良司 |

    Cafe Beeの珈琲で、最初の感想は、珈琲ってこんなに甘かっんですね、です。舌だけではなく、体全体で甘みを感じたことを思い出しました。何か、体の底にじっくりと抜けるような、ゆっくりとした甘み。季節で、少し変化はしますが、そこがいいです。また、いただきに上がります。

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