渡会審二写真展「音のない風景」始まる

鎌倉七里ガ浜の住人であり、繊細な質感を表現する写真家渡会審二さんの作品展が、「GALLERY B」で始まりました。
今回発表した作品は、2種の写真で構成されています。ひとつは浜で拾われたガラス瓶を並べたもの、他は水平線と空を切り取った海景です。
ガラス瓶はモノクロとカラー、海景はカラーです。
どちらの作品もデリケートな色彩感覚をよりどころにして撮影されています。
モノクロームの写真に色彩の言葉を使うのはおかしいと思われるかもしれませんが、渡会さんのモノクロ写真は、画面全体が美しい色に満たされているのです。それは被写体であるガラス瓶だけを見つめているからでなく、被写体を包み込んでいる空間ごと、目に見えるようにしたいと熱望した結果だろうと考えます。

渡会さんの目には空気に色がついて見えます。
湿度や密度を色で表現してるように見えます。

ガラス瓶がそこに存在してるのは空間があるからであり、その空間は目に見えないけれど、必ず写真で表現できるはずだと、作品を鑑賞する者に証明してるようです。

そして、繊細な感覚で作られている作品でありながら、展示されている写真はどこか図太いのです。
僕が渡会写真を好きなのは、この図太さです。
デリケートなトーンや質感を大事にするあまり、なんだか全体が神経質で弱々しい作品になってしまい、作品から発する「力」を失った写真も、時には見受けられますが、渡会写真には、ひ弱さは微塵もありません。


部屋の片隅で静かにうずくまっているだけで、どうにも気になる奴っているじゃないですか、そんなたたずまいを持った写真なのです。

渡会さんは僕より一世代若い年齢ですが、世代を超えてお互いに共有するものを感じます。
その一つに珈琲があります。
現在の僕にとって珈琲は無くてはならないものになっていますが、そのきっかけは渡会さんとの出会いが始まりです。
4年前にギャラリーを造った折、作品を見に来たお客様に珈琲でおもてなしをしようと決めたきっかけは、渡会さんが僕の目の前で焙煎してくれたからなのです。

渡会珈琲は、香り、甘さ、口あたりのやわらかさなどが、市販の珈琲とはまったく違ったものでした。
これほどの珈琲が自分で焙煎できるなんて、目からうろこでした。
それからです。僕が珈琲蟻地獄にのめりこんだのは。

写真も珈琲も、渡会さん独特の香りがあるのです。
作品は9/18日まで展示してます。
ぜひ、来廊して、渡会写真が表現した空間の色と香りを感じていただきたい。

 

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