おいしいコーヒー(15)

コーヒーの焙煎は、火を使うので偶然性が伴います。
どんなに厳密なやりかたをしても、最終的な出来不出来を決定するには運が左右します。
豆の状態と火の加減とが、うまく噛み合わないと思ったようになりません。

昨年の11月から焙煎をやり始めて、そろそろ1年になろうとしています。

仕事で家を留守にしない限り、毎日必ず焙煎をします。
多い時は一晩で7回ぐらいするのですが、それも、同じ方法ですることはありません。
それほどたくさんの焙煎方法があるのか?と思うかもしれませんが、それがあるのです。
天文学的な数字になるくらい、焙煎方法は考えられます。


おおざっぱに言って、火の加減を「強」「中」「弱」と分けたとしても、それぞれを主体にした焙煎で仕上げたコーヒーの味は違います。
「強火」を主体にすると、口あたりがきつくなりますが、長所は飲み終わりの抜けが良いことです。
「弱火」を主体に焙煎すると、口あたりがやわらかくなりますが、渋みが出やすく、抜けも悪くなりがちです。
「中火」はその中間です。

火の使い方も、「直火」と「間接」ではまったく異なります。

「直火」は、火の強さをあまり変えない方が結果がよくなります。ということは、何度も試して、適切な火の加減を探らなければなりません。
火が直接豆に当たりますから、火が強すぎると豆が燃えます。
弱すぎると、豆の芯まで火が通らないので、不味くて飲めたものではありません。
「直火」は、焙煎器の回し方も関係してきます。
一定の速度を保つようにしたほうが、データがとりやすい。
当然ながら、強い火なら仕上がりの時間は短いし、弱火なら時間がかかります。


「間接」は、「直火」とはむしろ正反対で、1回の焙煎で、火を強、中、弱、と使い分けなければおいしくなりません。
特に、「間接」は、豆が見えないので、進行具合を知る上で最も頼りになるのは音と香りです。
焙煎の経験者なら解りますが、焙煎の進行にしたがって、ハゼる音が聞こえます。
豆に含まれている水分が蒸発する時が1回目のハゼ、豆の内部が熱せられて、しわが伸びる時が2回目のハゼです。それぞれのサウンドは違います。1回目のハゼは音も大きく、連続音に間隔があります。2回目のハゼは音が小さく、早い連続音です。

ただし、火の強さと音の強さ、間隔は比例しています。
ですから、慣れてくればハゼた音で、火の加減を調節するのです。

前回書いたように、5項目の中で、何を一番重要に考えるかで、焙煎の仕方が変わってきます。
それぞれ、火の強さを考えながら「直火」と「間接」2種やりこなすだけでも大変な回数になるのです。
僕の場合は30秒ずつチェックしていったので、それこそ、やることのアイデアが無限に湧いてくるのです。


結局、どんなにやりかたを変えても、ある段階からどうしても満足いく焙煎になりません。
やればやるほど奥の深さを感じていくのです。
まさに、火の神秘です。
僕の理想をあざ笑うようです。
香りを主にすれば、飲み終わりの抜けが悪くなり、味を主に考えると口あたりがきつくなる。
僕が理想とする5項目の実現に至らない。
どうしても気にいらないのです。

そこで、もう一度最初から焙煎方法を見直すことにしました。
すると、あることに気付いたのです。
焙煎器の素材です。
そして、もうひとつ大事なことに気付きました。

以下、続きはまた次にします。

 

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