ついに「半夏生」が

DSCN1511

5月の連休中は、写真展「FACES II」開催中でもありますし、なるべく「CAFE Bee」に立って、コーヒーをいれるようにスケジュールを作りました。しかし、なんとも情けないのですが、腰痛に悩まされています。が、せっかく遠方からお客さまは来られるのですから、せめて、おいしいコーヒーでも、と思ってそろそろやっています。

前回のブログで少し書きましたが、昨年土の中に埋めた「半夏生」から、ついに新芽が顔を出しました。
昨夏、京都建仁寺塔頭両足院の庭で「半夏生」を見てから、僕の脳裏にある光景が浮かんできたのです。それは、毎年あらわれる青大将の「鈴木さん」を、「半夏生」の草むらの下で、写真を撮りたいのです。

真夏の強い陽射しに当たって、「半夏生」の葉は、夏でありながら、まるで雪景色のように白く輝き、その葉影の緑陰の根元を、青大将が音もなく移動していく。
たったそれだけの光景ですが、想像するだけで、僕にはいろいろな映像が浮かんでは消えていきます。
黒いガラス玉のような「鈴木さん」の眼球。先端が二つに分かれたよく動く舌。どんな化粧にも負けない複雑な顔面の意匠。異常なほどの力を秘めた長い胴体。ゆっくりと、それでいて少しでも目を離すといつのまにか消えてしまう形容しがたい動き。「鈴木さん」があらわれる時のムッとする暑さ。強い陽射しと草いきれが混じった独特な空気の匂い。夏でありながら雪景色のような「半夏生」の群生。それらの断片が入り混じった光景の中に立っていると、僕は記憶の中の一人の男になってしまう。

ここにこうして生きている確かと思われる僕よりも、「半夏生」の下で移動してる「鈴木さん」を眺めているほうが僕らしいと思ってしまう。

確信するというのは、不思議に感じることがあります。
見えているよりも、もっと確かな出会い方があって、その手応えに心が持っていかれてしまう。
しかし、空想や想像だけでは鳥肌が立つような出会い方に遭遇しません。
目の前の光景を入口にして、気がつくと時間も場所も見たこともいない新たな環境にいて、おののいている自分に嬉しくなったりします。
新たな環境は、往々にしてイメージの中に存在していますから、勝手に想像してるのでしょうけれど、やはり、眼前の風景が入口なのです。写真はそこに存在してるものを写す(移す)ことがきっかけですから、僕にとって写真が入口になることが多いのです。

今年の夏の僕の入口は、「半夏生」と「鈴木さん」です。

僕ぐらい長く写真を撮っていると、あらかたの出来事は予測してしまいます。
どんな写真になるのか、撮る前から解ってしまうほどつまらないことはありません。
僕の想像を突き破って、見たこともない場所へ連れていってくれる写真と遊びたいです。

これからの「半夏生」もどう成長していくのかわかりません。うまく葉を広げて予定どうり白く化粧をしたとしても、今年も「鈴木さん」があらわれてくれるか確証などありません。
出来ることは怠りなく準備して、あとは祈るばかりです。


2 Responses to “ついに「半夏生」が”

  • K.Tamura |

    GALLERY B オープン心よりお祝い申し上げます。
    未だに行けず気をもむばかりです。ご来館の方々のお声をブログで拝見いたしますと、貴方様のお人柄がお言葉のひと言ひと言から伝わってまいります。何時出でも感謝の気持ちをお持ちでいらっしゃられることが皆様に充分お分かりいただけているのでしょう。「FACESⅡ」の展示中にはどうにかして伺いたいと思います。待ちにまった半夏生、「鈴木」さんとの世界を見させていただけるのかと思うと楽しみです。遊ばれている光景を想像して苦笑しています。自分は半夏生の生まれです。七月の七夕過ぎのギラギラした太陽の下で、あの清楚な緑と白のコントラスト、それに色の境目が何とも言えぬ美しさで、個体差があるのがまた好きなのです。いずれ来るその時は、色、艶は消え、我雑でじゃじゃ馬の如く強いお姿になってしまいます。貴方様におかれましては望まれてやって来たのですから、末永く愛しんでやって下さい。他の植物に迷惑がられないように、広い心と思いやりでエリアの用意を・・・、「鈴木」さんに気に入ってもらえるでしょうか、空色に写っているのはホタルカズラですか?
    ドクダミが近くにありますが大丈夫でしょうか、八重咲きのかわいらしいエンジェルなら許せますが、何分双方ともドクダミ科ですので目を離さないようにして下さい、悪さをしますから。重薬としてお使いでしたら失礼をお許しください。ところでお身体が心配です。ご配慮は大変でしょうが、「無理をしてはいけませんライン」を越えられたのですから、この歳以上の方の皆さんは「自分に騙し騙し頑張るしかない」と唱えております。昨年からここまでのご負担は並大抵のものではありませんでしたでしょうから。まだまだ活躍して頂きたいと思います。身体に合わせて撮るのでわなく被写体に合わせた肢体動作ですもの、難しいと思いますが騙し宥めてお努め下さい。

    • Bishin |

      そうなんです、ドクダミが近くにあるので、気にしています。芽が出たばかりの初めの頃は,ドクダミとそっくりなので、気付かなかったくらいです。今週は時間があるので、毎日眺めることが出来そうです。
      確かにおっしゃるとうり、被写体に合わせて気持ちを持っていかなければならないので、少々疲れますが、その変化も、楽しむようにしています。
      鈴木さんが登場したら、すぐに報告します。

permalink :

trackback :