おいしいコーヒー(14)

久しぶりにコーヒーの話です。

コーヒーは嗜好品なので、コーヒーに期待するものは人それぞれです。

僕は大きく分けて5つのこと実現するために焙煎しています。
(1)香り、(2)口あたり、(3)味、(4)引き際、(5)残り香、です。
これ以外にも液色、温度、それに、カップ、スプーン、なども気になりますが、上記5項目を大切に考えています。
中でも、最もコーヒーに期待するのは(1)香り、です。

通常、新鮮な豆を焙煎し抽出すると、果物のような豆の香りがします。
この豆の香りだけを取り上げても、好みが分かれると思います。
僕はどちらかというとあまり好みません。
いや、その香りが嫌いというわけではなく、つまらないのです。
コーヒーを飲んで、コーヒーの香りがするだけでは不満です。
やってみればわかりますが、フレッシュな豆の香りを実現させるだけでも結構大変です。
が、しかし、いくらおいしくてもコーヒーから離れることはできません。
僕は焙煎しながらこんなことを思っています。


「自分で焙煎するからには、今まで飲んだことがない、経験したことがない香りを体験したい」

言い方を変えると、いかにコーヒーから離れることが出来るか、です。
離れるといっても、なにか別の要素を付加しては問題外です。
焙煎の仕方ひとつで、花のようなアロマの香りを実現させることが出来るはずです。

焙煎方法には大きく分けて「直火式」と「間接式」があります。

「直火式」は、読んで字のごとく、豆に直接火を当てて焙煎を進めます。
「間接式」は、ちょうど鍋で調理するように一旦容器を熱して、その熱伝導で焙煎を進めます。
僕が使ってる焙煎器は、手回しのロースターです。
形は、福引きに使う「カラン」と回して1等、2等を決めるあれに似ています。
もともとは大阪にあった「富士珈琲機械」が作ったものですが、会社が倒産してからそのオリジナルは現在ではめったに手に入りません。


現在ある手回しロースターは、浅草の「UNION」で売ってるものです。
形はオリジナルとまったく一緒です。
オリジナルの素材は鉄でしたが、現在のものはステンレスと鉄の合金です。
「直火式」は素材の表面に穴が開いていて、直接火が当たるようになっています。
「間接式」は合金の素材が外側と内側の2重構造になっていて、中間に空気の層があります。
なぜ自動焙煎器を使わずに、手回しにこだわるかというと、火の神秘がそのまま実感できるからです。

「直火式」と「間接式」では、焙煎したコーヒーの味、香りが違います。
もちろん焙煎の仕方ひとつですべてが変わるので、いちがいには言えません。が、僕の経験ではそれぞれに異なった特徴があります。

「直火式」は、味優先、引き際があっさりして、飲みやすい。
「間接式」は、香り優先です。

僕は焙煎し始めた当初は「直火式」でやっていました。
そのほうがコーヒーらしい味になったからです。そして、コーヒーで一番嫌いな「抜けの悪さ」がなかったからです。
ところが、最近ではずっと「間接式」にこだわっています。
「直火式」ではどうしても「香り」がついてこないからです。「香り」が無いわけではなく、豆の香りから離れることができないからです。

以下は次回の話にします。

 

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